2013 Fiscal Year Research-status Report
配向状態を規定したキラル分子の動力学的挙動の相違に関する異性体依存性
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25620014
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
蔡 徳七 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (20273732)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | キラル分子 / 散乱分布 / 光解離 / 二次元画像法 |
Research Abstract |
不斉中心を持つ(キラル)分子には鏡像異性体が存在する。両者は物理化学的性質が等しい。しかし生体などでは片方の異性体のみから構成されるという「ホモキラリティー」の重要な問題があり化学研究の根源的問題となっている。近年、分子レベルでの動力学的挙動の観測から、鏡像異性体の間で、物理化学的現象にわずかな違いが生じることがいくつかの研究グループにより報告され、分子を構成する原子配置の違いが相互作用を起こす光や分子の間でわずかな異方性を持つためであると指摘された。 本研究の目的は、分子を空間内に固定し多場合、光解離過程もしくは分子との衝突過程における生成物の散乱分布がキラル異性体間で相違を見出すことを目的としている。 今年度、我々は六極不均一電場を用いて2-ブロモブタンや2-プロパノールなどのキラル分子の配向状態を選別することに成功し結果を報告した。更に、配向状態を選別したキラル分子の光解離過程における生成物の散乱分布に関する理論研究を進めた。その結果、分子の座標を空間内に固定した場合、異性体間で明確な散乱分布の相違がみられることを見出した。 一方で、我々は六極電場により分子の配向状態を空間内に固定し、キラル分子の光解離過程で生成した生成物の散乱分布を二次元画像法を用いて観測するための測定システムの開発に取り組んでいる。生成物であるBr原子を多光子イオン化法で検出し測定することで異性体間での散乱分布の相違を見出研究を現在進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
キラル分子の光解離による散乱分布の測定を実施する前に、分子を空間内に固定した場合、光解離生成物の散乱分布が異性体間でどのような相違が見出せるかを理論計算により検証した。その結果、キラル異性体間で明瞭な相違が見出せることを明らかにすることに成功した。また、原子や分子などの衝突過程における散乱分布でも異性体間で相違が見出せることを示した。 一方で、六極電場によるキラル分子の配向状態選別には成功し、シミュレーションにより分子の配向状態分布を求めることに成功した。現在、光解離生成物を二次元画像法により検出するための測定システムの開発を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、キラル分子の光解離により生成した生成物の散乱分布を二次元画像法により測定するための検出システムの開発を進めている。今後、開発している測定システムによりキラル分子の異性体間での物理化学的な相違を見出し、すでに報告した理論計算の結果と比較する。 更には、準安定He原子のような分子による衝突過程における生成物の散乱分布も現在開発中の二次元画像測定システムにより測定し、異性体間での散乱分布の相違に関する知見を求める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は理論計算による結果の予測とそれに伴う測定システムの構築を実施した。理論計算から、測定システムの電場強度や観測システムのなどの見積もりをしたところ、当初の計画にやや変更が必要であることが示された。そのため測定システムの再構築を行ったため、助成金の使用計画が遅れることになった。 理論計算から求めた測定システムの構築に従い、今年度の初めに物品などの購入を実施し助成金の円滑な使用を図る。
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Research Products
(18 results)