2013 Fiscal Year Research-status Report
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25620031
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大須賀 篤弘 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80127886)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ポルフィリン / 環拡張ポルフィリン / 芳香族性 / 反芳香族性 / カテナン |
Research Abstract |
まず、環拡張ポルフィリンに糸を通し、カテナンを合成することを試みた。大型環拡張ポルフィリンとして、比較的に合成の容易なデカフィリンを選び、その金属錯体にNi(II)ジピリンユニットを結合させ、その後ジピリンα位を臭素化することを検討した。この研究中に、デカフィリンのPd(II)錯体を高収率で与える反応条件を発見した。当初、[46]デカフィリンとPd(OAc)2の反応により、[46]デカフィリンのPd(II)錯体を18%の収率で得た。その後、反応条件を検討したところ、[44]デカフィリンとPd(0)価錯体であるPd2(dba)3の反応により、同じ錯体が58%で得られることがわかった。この錯体は、環電流と遠赤外領域に強いSoret帯を示し、ヒュッケル芳香族分子である。この錯体をDDQで酸化すると2種類の[44]デカフィリンのPd(II)錯体が高収率で得られたが、ひとつは、ヒュッケル反芳香族分子でありもう一つはメビウス芳香族分子であることがわかった。これらふたつの化合物は互変異性体の関係にあり、溶液中でゆっくりと異性化する。酸化反応終了直後には、ヒュッケル反芳香族分子が優先して生成するが、溶液中で徐々にメビウス芳香族分子に変化することから、前者が速度論的支配生成物で後者が熱力学的支配生成物であることがわかった。これらの分子は44π環状電子系を有し、世界最大のヒュッケル反芳香族分子やメビウス芳香族分子である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環拡張ポルフィリンの化学は順調に進展している。具体的には、[26]ヘキサフィリンとポルフィリンがメゾーメゾ結合したハイブリッド分子を合成し、酸化してそのハイブリッドテープに変換することに成功した。亜鉛ポルフィリンーヘキサフィリンー亜鉛ポルフィリンのハイブリッド3量体分子の多量化反応をさまざまな反応条件で試みたところ、室温において、DDQとSc(OTf)3、で酸化することにより中程度の収率で、亜鉛ポルフィリンのメゾーメゾ結合反応が進行することがわかった。現在、12量体までの単離に成功した。また、1,3-フェニレンやチオフェンやピロールで内部架橋した[26]ヘキサフィリンを合成した。予想通り、[18]ポルフィリン電子系と[26]ヘキサフィリン電子系のデュアルな芳香族系を持つ分子であることがわかった。これらの分子は、アヌレノアヌレンのポルフィリン版とも言える全く斬新な芳香族性分子といえる。ケイ素を環拡張ポルフィリンの一種であるヘキサフィリンに導入できる方法を開発した。生成したケイ素錯体は、メビウス芳香族性を持つことが分かった。ノナフィリンのニッケル錯体が、多段階の可逆な酸化還元反応を行うことを発見した。最大、10の可逆な酸化還元が可能で、興味深い。また、デカフィリンのパラジウム錯体が、世界最大のメビウス芳香族分子であることも分かった。しかしながら、環拡張ポルフィリンからカテナンを合成する試みはまだ成功していない。
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Strategy for Future Research Activity |
環拡張ポルフィリンの化学を更に進展させ、同時に環拡張ポルフィリンをカテナン化する手法の道筋を付ける。ポルフィリンーヘキサフィリンーポルフィリン5量体や7量体の合成に挑戦する。これらの化合物の酸化的縮環反応により、ハイブリッドテープを合成し、どれくらいまで、吸収スペクトルが長波長シフトするか調べる。ヘキサフィリン以外の環拡張ポルフィリンへのケイ素の導入を試みる。ケイ素が適度の分子捻れを引き起こすため、大型の環拡張ポルフィリンへの数個のケイ素導入により、大型メビウス芳香族化合物やメビウス反芳香族分子の開発を行う。環拡張ポルフィリンの一つの特徴として、多段階の酸化還元状態を安定に取ることができるという性質がある。これを生かして、デカフィリンやテトラデカフィリンなどの大型の環拡張ポルフィリンを用いて、多電子リザーバーとしての可能性を探る。大型環拡張ポルフィリンとして、比較的に合成の容易なデカフィリンを選び、その金属錯体にNi(II)ジピリンユニットを結合させ、その後ジピリンα位を臭素化することを検討する。
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Research Products
(94 results)