2014 Fiscal Year Research-status Report
不安定原子価有機金属種の発生を鍵とする有機合成反応の新展開
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25620034
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Research Institution | Tokyo University of Science, Yamaguchi |
Principal Investigator |
北條 信 山口東京理科大学, 工学部, 教授 (50229150)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Rieke亜鉛 / α,β-不飽和カルボニル化合物 / 還元的環化 |
Outline of Annual Research Achievements |
α,β-不飽和エステル類の還元的二量化に用いるRieke亜鉛-LDBB系の特性をさらに別の炭素-炭素結合形成反応へと応用展開することを目指した研究として、二分子のα,β-不飽和エステルのβ-位同士を飽和炭素鎖で連結した構造の基質を合成し、還元的二量化反応と同様の条件下で環化反応を試みた。この検討を通じて分子間反応の還元的二量化と分子内反応の還元的環化の比較を行い、還元的二量化反応で起こる副反応は重合反応であり、低温かつ希釈条件下でこの重合反応を抑えることができることを見つけた。さらに、低温高希釈条件では環化速度が低下して未環化の還元体が多く生成するが、LDBBを加えると未環化還元体の生成が抑えられ、環化生成物が高収率で得られることを見つけた。この結果は想定している還元的二量化の反応機構を支持するだけではなく、二価亜鉛は反応性が低いのに対して、想定している一価亜鉛中間体が反応性が高い中間体であり、LDBBを等量加えることにより、連鎖機構によることなく一価の有機亜鉛反応剤を発生させることができる可能性を示唆している。 分子内にケトンカルボニル基とα,β-不飽和エステル部位を有するketo-enoateやケトンカルボニル基と単純な炭素-炭素二重結合部位を有するketo-alkeneの還元的環化についても検討した。いずれも効率の良い環化が実現した。なお、keto-enoateからの生成物は、環状骨格にヒドロキシ基とアルコキシカルボニルメチル基が置換した構造であるが、これらの立体化学に関しても検討を行い、両者の相対立体配置はsyn-であることを決定した。最終的にこれらの反応では、炭素-亜鉛結合を有する有機亜鉛反応剤が生じていることが期待され、その有機金属反応剤のプロトン分解物を単離していると考えるのが妥当である。今後、この有機亜鉛中間体と求電子剤の反応を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
還元的二量化反応の分子内環化への応用とケチルラジカルの反応性に基づく反応を実現することが、H26年度の計画に関する主たる部分であり、これに関してはほぼ達成できている。この研究を通じて不安定原子価亜鉛中間体の発生を示唆する非常に興味深い結果が得られており、引き続き次年度でもこれらの研究を続ける予定である。さらに生じた亜鉛反応剤と求電子剤との反応も検討を始めており、Rieke Mnの反応検討も計画を前倒して取りかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
既に取りかかっている還元的環化で生じる有機亜鉛反応剤と求電子剤との反応に関する研究を推進する予定である。現在のところ、DCl/D2Oで反応を停止することによるD化を確認している。求電子性の高い反応剤から検討を行い、クロスカップリングまで検討を行う。場合により、過剰のRieke亜鉛を取り除く必要が有ると考えており、化学的除去や遠心分離による除去も考えている。また、還元的環化の反応挙動から示唆される不安定原子価亜鉛中間体の選択的発生と反応に関しても検討を行う。この場合には、α-ハロエステルなどの構造的に単純な基質に対して、Rieke亜鉛の存在下に等量のLDBBを作用させることにより還元的にラジカル種を発生させ、これがRieke亜鉛と反応することにより不安定原子価亜鉛中間体の発生の検討を行う予定である。さらに、Rieke MnなどのRieke金属を用いる反応に関しても検討する予定である。これらの反応検討を通じて、本反応系の特徴や反応機構的な知見が得られるものと考えている。
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Causes of Carryover |
2年目に当たる今年度は、初年度の研究成果を受けて基質に関わる適用範囲を拡げることに重点を置いてきた。従って安価な通常の有機試薬を主に購入し、さらにこれらの試薬は他の予算からも購入した。次年度に高価な試薬や小備品を購入する必要があるために、50万円程度を繰り越すことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度の平成27年度は、さらに新しい研究の展開を目指して他の金属を用いた反応系の検討を行うために、多様な有機金属試薬や小備品を購入し、助成金を有効に活用したい。
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