2013 Fiscal Year Research-status Report
ビラジカロイドの励起状態の特色を活かした高効率太陽光発電材料の開発
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25620057
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
久保 孝史 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60324745)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | シングレットフィッション / ビラジカロイド / 太陽電池 / 三重項励起子 |
Research Abstract |
本研究は、1光子で2つの長寿命励起子(三重項励起子)を生み出すシングレットフィッション(SF)という現象を用いて、有機薄膜太陽電池の光電変換効率向上をねらうものである。それを実現するために、本研究で予定している研究項目は、①SFに適したビラジカロイド化合物の設計指針の確立とそれに基づく化合物の合成、②ビラジカロイドの光学測定による励起状態の電子構造の解明、③過渡吸収スペクトル測定によるSFの検証、④C60誘導体をアクセプターとする薄膜太陽電池の評価、である。 平成25年度は、研究項目①であるビラジカロイド化合物の設計指針の確立と合成に注力した。まずは理論的に、一重項ビラジカル性を有するビスアンテンのπ拡張を骨格の水平方向に行うと、SFに適したビラジカロイド化合物になることを、量子化学計算を用いて明らかにした。そこで、π拡張ビスアンテンの合成を実際に試みた。合成については、昨年度に確立したビスアンテンの大量合成のメリットを活かして、メシチル置換ビスアンテンと各種アラインとのDielsーAlder反応を検討した。その結果、ビスアンテンのbay領域に各種アラインが効率よく付加することがわかり、ビスアンテンの水平方向へのπ拡張に有効な合成法の開発に至った。従来、ビスアンテンの水平π拡張には、封管中の高温条件が必要であったが、本反応の開発により、簡便に水平π拡張体が得られる道筋ができた。得られた化合物は、電子スペクトルやCV測定を行って、その基本物性を明らかにし、量子化学計算を用いてその挙動の解釈も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、4つのミッションを挙げているが、そのうちの1つである「SFに適したビラジカロイド化合物の設計指針の確立とそれに基づく化合物の合成」について、SFに適した分子の設計指針を量子化学計算を用いて確立し、実際にその化合物の効率的合成法の開発に成功したことから、研究計画で設定した目標の1つが達成できたといえる。また、分光学的測定や電気化学的測定から、その化合物の電子状態に関する知見を得ることもでき、分子構造と物性の相関を明らかにすることもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き新規化合物の合成に挑むとともに、残る3つのミッションである「ビラジカロイドの光学測定による励起状態の電子構造の解明」、「過渡吸収スペクトル測定によるSFの検証」、「C60誘導体をアクセプターとする薄膜太陽電池の評価」を実施する予定である。特に励起状態の電子構造の解明とSFの検証は重要ミッションと考えている。
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Research Products
(9 results)