2013 Fiscal Year Research-status Report
有機/無機複合ナノ接合による熱電変換特性の解明と制御
Project/Area Number |
25620058
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山田 亮 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (20343741)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 単分子接合 / 熱起電力 / 熱電 / ゼーベック係数 / 走査型トンネル顕微鏡 |
Research Abstract |
1. Au/BDT/NiおよびNi/BDT/Ni (BDT: ベンゼンジチオール)のゼーベック係数 基板、探針がAuの場合、ゼーベック係数S = 7.4uV/Kと既報値(Reddy et al, Science, 315, 1568 ,2007)とよく一致した。基板、探針をNiの場合、S = -12 uV/Kとなった。AuとNiでは、仕事関数はどちらも5eV近辺で大きく変わらないため、ゼーベック係数の符号反転は伝導に寄与する軌道が電極との化学反応により大きく変化したことを示している。共同研究者(大阪大学 大戸助教)による第一原理計算の結果、実験で観測された結果が透過係数のスピン分裂によって引き起こされたことが裏付けられた。この結果は、強磁性電極を利用することで同じ分子でもゼーベック係数の符号が反転されることを示しており、電極-分子結合を利用した熱電素子の開発にとって重要な知見と言える。 2. オリゴチオフェン分子のゼーベック係数 チオフェンの5量体, 8量体,17量体を金電極に架橋した単分子接合の熱起電力を測定し、それぞれ、S=9.3, 28, 24 uV/Kを得た。この結果から、すべての分子で電荷担体がホールであることが明らかとなった。分子長が長くなるとゼーベック係数の値が大きくなったことから、長い分子では伝導に寄与するチャンネルがフェルミレベルに近づき、また、よりシャープな分布を示していることが示唆された。 3. C82およびGd@C82のゼーベック係数 金属内包フラーレンでは、S=-30uV/K, 非内包のものがS=-19uK/Vと、金属内包フラーレンが大きなゼーベック係数を示した。この原因は現在解析中であるが、内部の金属とフラーレン骨格の間の電荷移動により伝導に寄与するフラーレン骨格のπ軌道がよりフェルミレベル近傍に近づいたためと推測している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では種々の測定モードをもつ測定装置を開発する予定であったが、現状の単純な測定方式で比較的高精度かつ高確率で測定が行えることが明らかとなったため、種々の分子系における測定を前倒しして行った。とくにNi電極を用いた結果では、世界ではじめてNi電極の影響により分子接合のゼーベック係数が正負反転することを明らかにするなど、非常に重要な結果を得ることができた。他の分子系に対しても有用な成果を得つつある。 以上の状況から、研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在測定を進めている分子系についての研究をすすめるため、電流電圧特性の測定と熱起電力測定を高速で切り替えながら行う。電流電圧特性からは、接合の電子状態を簡便に見積もることができるため、分子種を変えた際のゼーベック係数の変化が、準位のシフトなのか広がりなのかを評価できる。この測定から、接合の電子状態とゼーベック係数の関係がより詳細に明らかとなり、接合の設計指針を導くことが可能となる。 また、分子接合の存在をより明確に検出できる距離変調にともなう電流変調応答を検出する手法を取り入れ、より確実性の高い測定を実現する。
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Research Products
(15 results)