2014 Fiscal Year Research-status Report
スピロ共役した不対電子間相互作用を活用した高次元スピンネットワークの構築
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25620066
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉岡 直樹 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (30222392)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スピロ共役 / 安定有機ラジカル / ニトロキシラジカル / フェルダジル / トリアジニル / 有機金属反応 / 分子磁性 / スピン整列 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属種を含まない軽元素のみからなる磁性体の開発は、全く新しい機能材料の出現にもつながる基礎的かつ重要な研究課題である。強磁性などの磁気秩序はバルクな電子物性であるので、磁性有機固体を合理的に設計するためには、分子内および分子間において不対電子のスピン間に磁気的な相互作用が伝播するように精密な分子設計と結晶設計を両立させる必要がある。本研究課題では、π電子系が互いに軌道が直交するように接近することが可能なスピロ共役系に着目し、これをコア分子とするデンドリマー状分子を合成し、空間的に広がったπ共役系同士の接近を利用した高スピンネットワークの構築を目指している。平成26年度においては、(1)コア分子となりスピロバイラジカルの周辺置換基に関する知見を整理すること、(2)分岐ユニットとなる窒素中心ラジカルの化学修飾法の確立を目指した。(1)の項目については、様々な置換基を導入したジヒドロアクリジンN-オキシル型スピロ共役バイラジカル分子を合成し、分光学的性質、電気化学的性質ならびに、不対電子間の磁気的性質を明らかにした。さらに計算化学的手法を取り入れてスピン中心を介した磁気的相互作用に関する知見を深めることができた。(2)の項目に関しては、ジフェニルベンゾトリアジニル、トリフェニルフェルダジルの化学修飾法ならびに有機金属反応を利用した分岐ユニットのオリゴマー化に道筋を立てるとともに、これらラジカルの集積特性について整理し構造と磁性の相関を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度においては、コア分子となるスピロ共役型分子の構築法を確立することができた。また、平成25年度に引き続き有機金属反応を活用したラジカル分子の化学修飾法に関する知見をより詳細に検討することが可能となった。以上より、平成26年度は、概ね順調に研究が進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
スピロ共役分子の効率的ラジカル発生法に関する実験条件の最適化を図るとともに、分岐型ラジカル分子の設計と合成を展開する。多面的な機能物性評価からスピン間相互作用についての知見を明らかにしている。
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Causes of Carryover |
2月下旬に液体ヘリウムを用いた低温ESR測定を計画していたが、測定に必要な試料量を確保できず。27年度に実施したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試料の合成が完了次第、液体ヘリウムを購入し、低温ESR測定を実施する。
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