2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25620072
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大宮 寛久 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40508876)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 不飽和炭化水素 / 銅触媒 / 水素化 |
Outline of Annual Research Achievements |
化学工業の基本原料であるエチレンやアセチレンなどの不飽和炭化水素類を用いた直接的かつ斬新な分子変換プロセスの開発に挑戦する。本年度も不飽和炭化水素類を用いた有機合成反応の開発を検討し、以下のような成果が得られた。
銅ヒドリド種よる不飽和化合物の水素化還元反応は、その温和な反応条件と優れた化学選択性により有機合成上有用であり、その開発研究は活発に行われている。近年では、ヒドロシランと銅錯体触媒によって形成させた銅ヒドリド種がアルキンの水素化反応に有効であり、シス-アルケン誘導体を高選択的に合成できることが報告されている。研究者は新たなヒドリド源として分子状水素を用いた内部アルキン類の銅触媒水素化反応を開発した。つまり、水素雰囲気下、6-ドデシンに対して触媒量の塩化銅-N-ヘテロサイクリックカルベン (SIMes) 錯体触媒 (10 mol%)とナトリウムt-ブトキシド (10 mol%) をオクタン/1,4-ジオキサン混合溶媒中、100 度で作用させると、水素化反応が優れたシン選択性 (cis/trans >99:1) で進行し、シス-アルケンを収率84%で与えた。本反応は、SIMes配位子を添加しない場合でも、僅かに収率が減少するものの、同様の優れたシン選択性で進行した。銅(I)アルコキシドと分子状水素の反応により生じた銅ヒドリド種の炭素-炭素三重結合への付加、続く得られたアルケニル銅種のプロトン化を含む反応機構を経由していると考えている。本手法は、脂肪族、芳香族アルキン基質ともに適用可能である。アルコキシ、エステル、ピリジンなどの官能基を有したアルキン基質を用いても優れたシン選択性で反応が進行する。したがって、見出された銅触媒水素化反応は、高原子効率かつ高選択的なシスアルケンの合成法であり、新しい有機合成法として有用であると考えられる。
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