2013 Fiscal Year Research-status Report
二酸化物低分子量物質の特異的活性化による高付加価値化合物への立体選択的変換反応
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25620075
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
荒井 孝義 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80272483)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 触媒設計・反応 / 錯体・有機金属触媒 / 触媒的不斉合成 / 配位子 / 低分子 / 反応場 / 反応機構 |
Research Abstract |
金属とプロトンの協調作用による官能基特異的活性化機構による触媒的不斉合成を実現するために、独自に開発を行ったビスイミダゾリジンピリジン(PyBidine)-金属不斉触媒を基盤とする反応開発ならびに反応機構の解明を行った。 まず、予備的知見の得られていたPyBidine-Ni(OAc)2触媒を用いる触媒的不斉ヨードラクトン化反応において、金属塩として酢酸イオンを有する金属塩が一般に良好な触媒活性を示すことがわかった。また、PyBidine配位子に特徴的なNH-プロトンを有さない既存のビスオキサゾリンピリジン(pybox)やビスイミダゾリンピリジン(pybim)では、触媒活性と不斉誘起能に顕著な低下が見られた。これは、金属とプロトンの協調作用が効率的に機能していることを示す重要な知見である。本反応において、NMRならびにMS解析により、酢酸ニッケルの酢酸イオンと基質のカルボン酸が交換して反応が進行している機構が明らかとなり、触媒的不斉ヨードラクトン化に新たな触媒設計指針を提示することができた。本触媒を用いることにより、ニトロメタンや酢酸ならびにメタノールなど低分子量化合物を活性化し、高機能分子に変化できることも見出した。 さらに、広範な反応基質に対し、十分に高い立体選択性をもたらすため、基質に適応させた精密な不斉反応場の構築を可能にするビスオキサゾリジンピリジン配位子(PyBodine)の開発を行った。アゾメチンイミンとアルキンの[3+2]環化付加反応によるN,N-二環性ピラゾリノン誘導体の合成に有用なPyBodine-Cu(OAc)2触媒をTailor-made型に創出することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ニトロ基の活性化機構を範とする官能基特異的触媒的不斉反応の開発では、ニトロメタンや酢酸ならびにメタノールなど低分子量化合物を活性化し、高機能分子に変換できることも見出しており、当初の研究計画に基づいて順調に推進している。特に、単純なpKaに基づかないアルコールの活性化にも成功したことは、当初に計画していた以上の成果である。また、反応機構についても1)配位子中のNH-プロトンが基質の活性化能を示すこと、2)金属カルボキシレート経由の反応であることについて、これらを強力に支持する解析結果を得ており、「金属とプロトンの協調作用による官能基特異的活性化機構」を触媒開発の設計概念として確立することができた。本成果は、Synlett, 2013, 24, 2045-2048に報告している。 広範な反応様式に適用可能な触媒開発においても、ビスオキサゾリジンピリジン (PyBodine)-金属不斉触媒のTailor-made型開発にも成功し、本成果は、Chem. Commun. 2013, 49, 7776-7778に発表するとともに、雑誌の裏表紙の扉絵にも採用されそのユニークな触媒機能、開発手法が広く世界に発信された。以上のように、当初計画した以上に、初年度において研究は計画に基づいて着実に推進し、想定以上の成果を得ることに成功した。現在、これらの知見を元に、二酸化炭素などより効果的で選択性の高い不斉触媒の開発を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は、当初の計画以上に順調に進展しているため、研究計画に変更はない。現在、初年度で得られた知見を元に、より効果的で選択性の高い不斉触媒の設計・開発を進めている。 開発目標とする反応には、ニトロ化合物を用いる反応やヨードラクトン化を基盤として、高極性なスルホン酸やリン酸化合物などを用いる分子内ならびに分子間反応を取り上げる。これらの基質は、一般に金属イオンのカウンターアニオンとして安定な塩を与えるため、触媒的不斉合成への展開が困難と思われるが、本研究の「金属とプロトンの協調作用による官能基特異的活性化」構想により達成を目指す。また、平成25年度の研究で予想以上の成果が得られたアルコールの活性化反応について、イサチン由来のイミンへのアルコールの付加反応など、医薬など生物活性の期待できる高付加価値化合物の合成反応へと展開する。ニトロ化合物の活性化についても同様に、イサチン由来のイミンへの付加反応を検討し、同一原料から多角的な触媒的不斉反応を研究することで、多様性指向型触媒的不斉合成として特徴ある研究展開とする。 さらに、低分子量化合物の効率的で応用性の高い高付加価値化合物への変換を目指し、二酸化物を用いる有機化合物の官能基化反応に研究を展開する。平成25年度の研究で得られたフェニルアセチレンと二酸化炭素の反応に良好な活性を示す触媒を基盤として、平成26年度はベンジルアミンとベンズアルデヒドから調製できるイミンと二酸化炭素(CO2)の反応により光学活性アミノ酸の触媒的不斉合成を目指す。
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