2013 Fiscal Year Research-status Report
触媒的酸素原子移動反応を活用する新規ケテン発生法の開拓
Project/Area Number |
25620077
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山本 芳彦 名古屋大学, 創薬科学研究科, 教授 (60283412)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 遷移金属錯体 / 触媒 / アルキン / 環化反応 / 多環芳香族化合物 |
Research Abstract |
スルホキシドやアミンオキシドなどの酸化剤の存在下、カチオン性ルテニウム錯体触媒を用いてオルト位に種々の官能基を有する末端アルキンの反応性をスクリーニングしたところ、当初想定した酸素移動反応は進行しなかったものの、ビアリール誘導体からは環化反応が進行し、フェナントレン誘導体が生成した。一方、内部アルキンからは環化反応が全く進行しないことから、この反応は末端アルキンとカチオン性ルテニウム錯体から生成するビニリデンカルベン錯体を経由して進行すると考えられた。しかしながら、反応系中に水分が存在すると環化反応にかわり、マルコフニコフ型水和反応が進行しビアリールメチルケトンが生成したため、ビニリデンカルベン錯体を経由していないことが判明した。現在のところ詳細は不明であるが、カチオン性ルテニウム錯体のπ配位によってアルキンが活性化されて環化が進行したと考えられる。さらに、様々な置換様式をもつビアリールおよびヘテロビアリール誘導体を調製し、本環化反応の一般性を検討したところ、広範囲の反応基質から同様のフェナントレン誘導体が生成し、特にヘテロ環としてフラン、チオフェン、インドールを含む基質から効率よく環化生成物を得ることができた。今後、本反応の機構解明を目指し、環化反応が進行しにくい反応基質とカチオン性ルテニウム錯体との化学量論反応を実施して、反応中間体の単離・同定を目指す。また、当初の目的を達成するため、ルテニウム錯体に替えて、ロジウムやイリジウムのカチオン性錯体を触媒として酸素移動型酸化反応を進行させ、ケテンを経由する新規反応の実現へ向けて検討を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請書に記載した反応を実現するため、触媒と反応基質および酸化剤のスクリーニングを実施した結果、予期せぬ触媒的芳香環形成反応が進行した。しかしながらこの反応は、当初の目的実現の鍵となるビニリデンカルベン錯体を経由するものと想定されたことから、まず同反応の適用範囲と機構の解析に着手した。その結果、実際には目的とするビニリデンカルベン錯体を経由しないことが判明したため、今後は、遷移金属種を変更して目的達成に向けて再度スクリーニング等を実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
カチオン性ルテニウム錯体を触媒としてビニリデンカルベン錯体に対する酸素移動型酸化反応を検討したが、目的反応の進行を示唆する結果は得られなかった。一方、最近になり韓国の研究グループが、ロジウム錯体によるスルホキシドから末端アルキンへの分子内酸素原子移動が進行することを報告した。この例では、ビニリデンカルベン錯体からのケテン形成が初めて達成されたが、その応用としてはエステルやアミド等のカルボン酸誘導体への変換に限定されている。この知見を参考にして、遷移金属種をルテニウムからロジウムやイリジウムへと変更し、スルホキシドやアミンオキシドからの酸素原子移動を実現するとともに、より高度な環化付加反応へと展開する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ビニリデンカルベン錯体への酸素移動型酸化反応によるケテンの新規発生法の開発を目的として各種スクリーニング実験を実施した結果、予期せぬ環化反応が進行した。この反応が、当初の目的達成の鍵となる機構を含むと考えられたため、その一般性の検討と機構解明に時間を要した。そのため、研究実施計画通りには進行せず、消耗品費等が計画よりも低く抑えられた。 当初目的の実現に向け、ルテニウムからロジウムやイリジウムへと遷移金属種の検討範囲を拡げる必要が生じたため、遷移金属塩の購入に充てる。
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Research Products
(1 results)