2013 Fiscal Year Research-status Report
ホウ素反応剤の付加に基づく芳香族化合物の革新的脱芳香化
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25620082
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大村 智通 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00378803)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 合成化学 / 芳香族化合物 / 複素環状化合物 / ホウ素 / 付加反応 |
Research Abstract |
ホウ素の高い窒素親和性に基づいて含窒素芳香環の脱芳香化を温和な条件下実現する、革新的分子変換法の開発を目的として研究に取り組んでいる。平成25年度は、交付申請書研究実施計画に記載した「研究項目1. ジボロン、シリルボラン、ヒドロボランの付加による含窒素芳香族化合物の脱芳香化の開発」において、二つの窒素原子を含有する芳香族化合物とビス(ピナコラート)ジボロンの反応を検討した。その結果、4,4'-ビピリジンに対するジボロンの付加がベンゼン溶媒中110℃で効率よく進行し、脱芳香化生成物であるN,N'-ジボリル-4,4'-ビピリジニリデン(A)が良好な収率で生成することを見出した。反応は遷移金属触媒の非存在下において効率よく進行したことから、ホウ素-窒素結合形成が反応の駆動力となるとともに、脱芳香化生成物の安定化に寄与していることが示唆された。メチル基やメトキシ基、クロロ基を有する一置換4,4'-ビピリジンも本反応に利用することができ、対応する脱芳香化生成物を得ることができた。一方、窒素原子近傍に複数の置換基を有する場合には反応が進行せず、ジボロンのホウ素原子に対してビピリジンの窒素原子が求核的攻撃する過程が反応進行の鍵となっていることが示唆された。本反応で得られた脱芳香化生成物Aとピラジンの反応を検討したところ、ボリル基の移動を伴うピラジンの脱芳香化と化合物Aの芳香化が進行することを見出した。ジボロンとの反応では脱芳香化が達成できない多置換ピラジンに対しても、Aを用いることにより効率のよい脱芳香化が進行したことから、Aがジボロンよりも高反応性のホウ素供与脱芳香化試薬として利用できることが明らかとなった。これらの知見は、脱芳香化の効率向上ならびに適用可能な基質構造の拡張を実現するための基盤となるものであり、特徴ある分子変換反応の設計・開発に資すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
4,4'-ビピリジンの脱芳香化により得られた化合物N,N'-ジボリル-4,4'-ビピリジニリデン(A)が、自身の芳香化を駆動力とするホウ素供与脱芳香化試薬として利用できることは、本研究課題の開始段階では予見できなかった知見であり、本知見を基にした脱芳香化の新手法に関する研究展開が大いに期待できるため。
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Strategy for Future Research Activity |
4,4'-ビピリジンの脱芳香化により得られた化合物N,N'-ジボリル-4,4'-ビピリジニリデン(A)を基軸とする含窒素芳香族化合物の脱芳香化手法開発を推進する。Aは反応により芳香化され4,4'-ビピリジンに戻ることから、触媒として機能することが期待できる。この点に注目し、Aを用いる触媒的脱芳香化の開発を重点的に検討する。有効な触媒構造や反応溶媒、反応温度等について明らかとし、脱芳香化を適用可能な基質構造について知見を得る。また、反応機構に関する知見を得、これを基にした新反応開発へ展開を図りたい。
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