2013 Fiscal Year Research-status Report
“ポスト”クロスカップリング反応を基軸とする高分子半導体合成技術の開発
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25620094
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
神原 貴樹 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90204809)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高分子半導体 / 導電性高分子 / クロスカップリング反応 / 原子効率 / グリーンケミストリー / 直接的アリール化反応 / 分子軌道計算 |
Research Abstract |
本研究は、直接的アリール化反応に基づく重縮合をπ共役高分子半導体のスタンダードな合成法として確立することを目的とする。 高分子量のπ共役高分子を効率よく合成するために、本年度は、反応効率の高い触媒系の選択と高い反応性を示す芳香族モノマーの探索を進めるとともに、各芳香族モノマーの重合に適した反応条件の探索を行った。その結果、チオフェン誘導体の置換基と重合反応条件の間に相関性があることが確認され、置換基の電子的な性質が重合条件の選定に大きく影響することが明らかとなった。 芳香族モノマーの反応性を定量的に示すために、分子軌道計算を取り入れて重合反応に用いたチオフェン誘導体の脱プロトン化・メタル化の反応素過程における活性化エネルギーの計算を行ったところ、重合反応の結果と一定の相関性が見られた。この相関関係は他の複素五員環化合物でも概ね対応しており、複素五員環化合物をモノマーとして用いる場合には、この素過程の反応性が重合反応を効率化するための重要な鍵となることが示された。 一方で、カップリングパートナーであるジハロゲン化芳香族モノマーの選択も重要であることがわかってきた。例えば、ジブロモナフタレンジイミドは、カルボニル基の配位性もしくは立体障害によりを重合がほとんど進行しなかった。そこで、2段階の直接的アリール化反応を行うことで、反応性の低いジハロゲン化芳香族化合物を重合反応に組み込む新たな手法を考案した。 さらに、直接的アリール化反応によって合成したπ共役ポリマーを実際に有機デバイスに実装して素子特性評価を行った。その結果、高分子量のポリマーで且つ末端のハロゲン基や不純物の少ない試料ほどデバイスの特性が向上することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この重合において、チオフェン誘導体の置換基の電子的な性質が反応性に大きく影響していることを明らかにできた点は、重合条件の選定において重要な知見と捉えている。今後さらに詳細に検討を進めることで、対象となる芳香族モノマーに適する反応条件の選択指針を明らかにできるものと考えている。また、学外研究協力者の指導の下で、年度内に分子軌道計算に基づく芳香族モノマーの反応性の評価が研究室でもできるようになった点は大きな進展といえる。今後さらに対象とする芳香族モノマーを広げて、実験と計算の両面から検討をすることで、高い反応性を示す芳香族モノマーの予測手段を確立する目途が立つものと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の成果を基にして、種々の芳香族モノマーを対象とした重合実験と分子軌道計算の両面から、さらに探索試験研究を進めるとともに、高分子半導体として注目度の高い芳香族モノマーの重合を検討し、この重合法が適用できる芳香族モノマーの更なる拡張を図る。上記重合法によって得られるπ共役高分子の化学構造・高次構造を確認すると共に、光吸収・発光等の光学的特性や電気化学的酸化還元特性など、高分子半導体としての評価に必須な基本物性を明らかにする。得られるポリマーの中には、既存の有機金属重縮合法によって合成されているものも存在する。従って、それらの既報データとの比較検討を行い、結果を適宜フィードバックすることで本重合反応の特長を明らかにするとともに、社会ニーズに合致した高分子半導体材料の開発手段としての意義を明確にする。
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Research Products
(13 results)