2013 Fiscal Year Research-status Report
天然配位子とイオン液体を用いるランタノイドの環境調和型高効率分離システム
Project/Area Number |
25620108
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
井村 久則 金沢大学, 物質化学系, 教授 (60142923)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永谷 広久 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (90346297)
森田 耕太郎 金沢大学, 物質化学系, 助教 (70396430)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 液体膜分離 / 溶媒抽出 / イオン液体 / ランタノイド |
Research Abstract |
研究初年度は,酸性抽出剤をヒノキチオール(Hipt)から同族のβ-ジケトンにまで拡張し,中性配位子として,親油的で水に溶けにくい1,10-フェナントロリン(phen)誘導体,さらに疎水的なトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO),溶媒として,極性のo-ジクロロベンゼン(DCB)と1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド (C4mimTf2N)を用いて,ランタノイド(III)イオン(Ln)の抽出,さらには液体膜輸送実験にも着手した。 1)Hiptと1,10-フェナントロリン誘導体として,4,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン (dmp),4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン (dpp)を用い,全Lnの協同効果抽出を検討した。塩基性の高いdmpや,疎水性の高いdppを用いるとphenを用いる時と比べて協同効果が大きくなり,Hipt-dmp系ではLn間の分離係数はこれまでで最大となることが示された。 2)β-ジケトンとして,2-テノイルトリフルオロアセトン(Htta),2-ナフトイルトリフルオロアセトン(Hnta),ベンゾイルアセトン(Hba)を用い,TOPOとの協同効果抽出を研究した。C4mimTf2Nを用いると,ベンゼンなどの有機溶媒系とは全く異なる抽出選択性を示し,協同効果によってLnの抽出効率だけでなく,相互分離効率も高くなることを見出した。特にHba-TOPO-C4mimTf2N系では,Luにおいて最も大きな協同効果が発現し,La,Eu,Lu間の分離が最も大きくなることを明らかにした。 3)Hiptと dpp を含むDCB溶液を疎水性ポリビニリデンフロリド高分子膜に含浸させ液体膜(SLM)を調製した。SLMを供給相と受容相の二種類の水相で挟み,供給相中の金属イオンをSLM内の抽出試薬によって抽出し,受容相で逆抽出することによって,La,Eu,Luイオンが輸送できた。供給相の減少率と受容相への輸送率は等しく,理想的なイオン輸送ができ,8時間で99 % 以上の輸送に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
協同効果抽出の溶媒としてイオン液体を用いると,従来の有機溶媒系とは全く異なり,酸性度の低いHbaで,しかも重希土のLuにおいて最も大きな協同効果が発現し,結果としてLnの抽出効率の増大だけでなく分離効率も同時に高めることに成功した。この研究成果の一部については,学会誌に速報(Anal. Sci., 30, 323 (2014))で論文発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
計画に大きな変更はないが,できるだけ広範囲の抽出剤の組合せを検討し,その中から液体膜系への展開を図る予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
イオン液体は高価であり,従来から研究室で合成し,少量(1mL)の抽出実験を行ってきた。本研究ではイオン液体0.5 mL,水相0.5 mLの微量抽出法を実現することができ,イオン液体の使用量を当初の予定より大幅に減少させることができた。また,廉価な液体膜輸送装置を新たに設計し,実用化することができた。 研究最終年度は,イオン液体の成分イオンの効果を調べる予定であり,数種類の高価な市販品を使用する必要がある。また,研究計画に沿って,温度効果を検討するためにウオータージャケット付きの液体膜輸送装置を作成する予定であり,必要額として計上する。
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Research Products
(4 results)