2014 Fiscal Year Annual Research Report
ICP発光分光分析法のための環境にやさしい高感度化技術の開発と応用
Project/Area Number |
25620118
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Research Institution | Fukui University of Technology |
Principal Investigator |
田中 智一 福井工業大学, 工学部, 教授 (40236609)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ICP-AES / ICP-MS / 静電シールド / 高感度化 / スペクトル干渉 / ステンレス鋼 / ボルツマンプロット |
Outline of Annual Research Achievements |
【シールド素材の影響に関する検討】 昨年度,ICP質量分析法(ICP-MS)における目的元素やアルゴン分子イオンなどの強度に及ぼすシールド素材の組成の影響を調べた。その結果,目的元素とバックグラウンド(BG)の信号強度の比(SB比)の向上にはステンレス鋼(SUS)が適していることを見い出したが,鋼種によって影響に差があることも分かった。そのため,本年度はSUSの主成分の一つであるNiの含有率に着目して検討を行った。Niの含有率の範囲が10~70%の種々の合金を用いてシールドを作製し,目的元素(FeおよびCr)とそれぞれのBG分子イオンの強度を測定した。目的元素の信号強度はNiの含有率が40%のコンスタンタンを用いたときに最大になったものの,BGも増大したため,SB比はNiの含有率が10%のSUS304を用いたときに最も高くなった。この結果からも,ICP-MSのシールド素材としてSUS304が適していることが確かめられた。 【プラズマの温度測定】 昨年度,ICP発光分光分析法(ICP-AES)において,プラズマの半径方向における発光強度のプロファイルを測定した結果,静電シールドの有無に関わらず,プラズマの形状の変化はほとんど認められなかった。そこで,本年度は3種類のSUS(301,302,304)を用いてシールドを作製し,ボルツマンプロット法を用いてプラズマの励起温度,ガス温度および電子密度の測定を試みた。その結果,励起温度,ガス温度,電子密度のいずれにおいてもシールドの有無による差が認められた。励起温度はシールドを挿入すると低くなる傾向を示すのに対して,ガス温度および電子密度は逆の傾向を示した。また,励起温度,ガス温度,電子密度のいずれも,程度の差はあるものの,素材間で変化が見られた。これらのことから,静電シールドの挿入によってプラズマの励起温度およびガス温度が変化し,このことが干渉抑制効果をもたらした結果,ICP-AESの感度向上につながったのではないかと考えられる。
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