2013 Fiscal Year Research-status Report
光力学線療法への応用を志向する房状ポルフィリンカプセルの創出
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25620130
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中島 洋 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00283151)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | チトクロムc / ポルフィリン / 好熱菌由来タンパク質 / 光力学線治療 |
Research Abstract |
25年度の研究では、元の補欠分子族である鉄プロトポルフィリン(ヘム)を含まない好熱菌由来チトクロム変異体を骨格タンパク質に用い、金属イオンを結合していないプロトポルフィリンとの複合体形成、並びにその安定性の評価、プロトポルフィリンからの一重項酸素の発生とプロトポルフィリンの分解速度の定量化を試みた。生成した複合体は、pH7の緩衝溶液中で高い安定性を示し、緩衝液が全くプロトポルフィリンを含まない条件下でも、チトクロムからの解離はみられなかった。今後の研究では、チトクロムに対するプロトポルフィリンの結合定数のpH依存性を求め、利用を目指すpH領域でチトクロムがプロトポルフィリンの強固なキャリアとして機能することが可能か、同定を進める。複合体からの一重項酸素の発生とヘムの分解については、いまのところ、再現性のあるデータが得られておらず、チトクロムとの複合化の効果を議論できていない。今のところ原因は不明であるが、実験系における酸素濃度、照射光量の厳密化を進め、統計的な処理により、議論を進める予定である。 複合体形成時のプロトポルフィリンの吸収スペクトルは、ポルフィリン環が高い平面性を示すことを示唆しており、プロトポルフィリンがチトクロムの狭い内部空間で高い立体規制を受けて結合していることが分かった。さらにこの狭い空間には、フラビンアデノシン2-核酸のような比較的大きな平面性分子の取り込みが可能であることも明らかとなり、ポルフィリン骨格以外にも薬剤として機能する多環芳香族分子のキャリアとしてチトクロムが機能する可能性を示すことができた。今後は、これら分子とチトクロムとの複合体安定性についても同定を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
プロトポルフィリンとチトクロムとの複合体生成については、当初の計画通り進行しており、その物性についても理解が進みつつある。その結果、ポルフィリンキャリアとして申請者が見出したアポチトクロムが有用であることは、かなり証明できたといえる。現在最も研究の進展が遅れているんが、チトクロム-ポルフィリン複合体をカーボンナノチューブのようなより大きな担体に固定する段階である。緩衝溶液中で安定なチトクロム-ポルフィリン複合体もカーボンナノチューブの存在下では、ポルフィリンが脱離し、ナノチューブ表面に吸着される傾向を示す。おそらくは、タンパク質骨格とナノチューブとの疎水的相互作用により、タンパク質構造の一部が変性し、取り込んだポルフィリンとの複合体安定性が低下するためと思われる。この問題を解決するため、現在はアポチトクロム表面にオリゴエチレングリコールを修飾し、タンパク質骨格を保護するとともにタンパク質―ナノチューブ間の疎水相互作用を抑制しながら、両分子間の共有結合形成方法について検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度の研究で浮かび上がった問題、「カーボンナノチューブとの混合により、チトクロム-プロトポルフィリン複合体が不安定化する」問題の解決に全力を尽くす。研究の進捗状況でも述べたように、この問題の原因は、カーボンナノチューブが界面活性剤のように振る舞い、タンパク質の部分的な変性を引き起こすことに原因があると考えられるため、タンパク質表面の親水性の向上、また骨格自体の安定性の向上を狙って、タンパク質表面へのポリエーテル鎖修飾、タンパク質骨格内部でのシステイン残基間によるジスルフィド結合形成の導入を試みる。 問題の解決に加えて本年度は、チトクロム骨格にターゲット細胞で特異的に発現するタンパク質分解酵素の認識配列を導入し、複合体からのポルフィリン放出が目的部位で速やかに進行する仕組みを作りこむ。この仕組みはチトクロム骨格の安定化とは相反する性状の付与を必要とするため、両実験を同時に進め、タンパク質の安定性とタンパク質分解酵素に対する感受性の双方に適度なバランスを有する骨格分子を実現する。 以上の問題解決が実現した後、新たに設計した合成したチトクロム-ポルフィリン複合体を用いて、ナノチューブへの結合を試み、房状チトクロムポルフィリンキャリアの実現を目指す。
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Research Products
(4 results)