2014 Fiscal Year Annual Research Report
光力学線療法への応用を志向する房状ポルフィリンカプセルの創出
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25620130
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中島 洋 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (00283151)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ポルフィリン / 一重項酸素 / チトクロムc / 光力学線療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度は、懸案であった、鉄プロトポルフィリンを含まない好熱菌由来チトクロムc変異体とプロトポルフィリンIXとの安定な複合体(PorIX@apo-Cyt c)の高収率調製法を確立するとともに、得られる複合体による「ポルフィリンの光増感反応→一重項酸素発生」の同定、およびEPR効果発現に必要なPorIX@apo-Cyt c集積化を目指した。 高効率な一重項酸素の発生には、増感剤の励起三重項状態(T1)が長寿命である必要がある。PorIX@apo-Cyt cの水溶液中でのT1寿命は、550μSであり、ジクロロメタンやアセトン溶媒(それぞれ4.5、1.5μS)の100倍以上大きく、DMSO溶媒(170μS)と同程度であった。このことは、apo-Cyt cの空孔が高い極性の疎水環境であることを示唆しており、PorIXの励起状態安定化に有利であることを示している。実際、PorIX@apo-Cyt cの生理的pHにおける一重項酸素発生の量子収率は、35%(励起波長420nm)であり、励起波長は異なるものの、一重項酸素の発生効率が高いことで知られるメチレンブルーの値(量子収率52%、励起波長660nm)に匹敵する。なお、PorIXは非水溶性であるため、水溶媒中での比較実験は行っていない。このようにapo-Cyt cによるPorIXの包摂は、ポルフィリンの水溶化と高い一重項酸素発生効率が実現可能であり、生体適合性に優れた光力学線療法のポルフィリン誘導体キャリアとして有望である。 PorIX@apo-Cyt cには、未反応のシステイン残基が存在する。この官能基をジアゾニウム基をパラ位に有するフェニルマレイミドで修飾し、ジアゾニウム基の脱離を利用したカーボンナノチューブへの固定を試みた。最新の結果で、金属性カーボンナノチューブを用いることでPorIX@apo-Cyt cの固定が効率よく進行することが分かり、現在反応生成物の同定を進めている。
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Research Products
(6 results)