2013 Fiscal Year Research-status Report
液晶性多糖を用いた力学刺激によるイオン吸脱着システムの創製
Project/Area Number |
25620139
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
三俣 哲 山形大学, 理工学研究科, 助教 (80322006)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 天然高分子 / 多糖 / 粘弾性 |
Research Abstract |
サクランへのイオン吸着挙動を明らかにするため、サクラン水溶液の電気伝導度および1価塩添加効果を調査した。サクランは福岡県の黄金川に自生する光合成微生物藍藻Aphanothece sacrumから抽出される天然多糖類であり、分子量1600万、低濃度で液晶性を示すこと、希土類イオンを選択吸着するなどの特徴がある。サクランは硫酸基を12モル%、カルボキシル基を17モル%もつ電解質多糖である。そのため、サクランのイオン吸着にはこれらの極性基が強く影響していると考えられる。サクラン濃度1%の水溶液(弱いゲル)にはcmオーダーの液晶配向したマクロドメインが含まれる。アルカリ金属塩を添加する前後でイオン濃度がどのように変化するか電気伝導度測定により調査した。塩を添加すると伝導度はわずかに低下した。しかしながら、データのばらつき、サンプル依存性が大きいことがわかった。一方、定常流粘度測定により粘度に及ぼす液晶ドメインの影響を調査した。低せん断速度領域では、粘度は時間とともに増加する逆チキソトロピー性を示すことがわかった。偏光顕微鏡観察から、時間とともに配向ドメインが崩壊することが明らかになった。従って、粘度の増加はサクラン鎖間での架橋構造形成に起因すると考えられる。1価塩を添加すると粘度の増加量が増大した。高せん断速度領域では、粘度はせん断速度とともに低下した。せん断によって配向ドメインが崩壊し、分子鎖が流動方向に配向したと考えられる。粘度測定によって、このような構造転移が検出できることがわかった。伝導度と定常流粘度測定を同時に行う装置に必要な微小電極を作製した。伝導度測定には、電気分解の影響を受けにくい交流法を用いる。伝導度の周波数スペクトルから電極分極の影響が少なくなる周波数領域を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サクラン水溶液の電気伝導度に及ぼす1価塩(5種類のアルカリ金属塩)の影響についての実験結果を整理、検討している。追加実験も含め、今後イオン吸着挙動を決定する因子について明らかにする。定常流粘度測定で得られた結果から、低速せん断による架橋点増加のメカニズムを検討している。架橋点形成に及ぼす塩効果について、伝導度、粘度の同時測定装置を用いて、より詳細な知見を得る。微小電極を作製した。伝導度分布のマッピングに必要な電極数、配置を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
1価塩添加の前後における伝導度の変化量のバラつきが大きい。変化量を決定している物理的因子を特定し、吸着の有無を明らかにする。配向ドメインを形成する状態(高粘度状態)と配向ドメインを持たない状態(低粘度状態)で伝導度を測定し、配向ドメイン形成とイオン状態について明らかにする(主にカウンターイオン)。更に、配向ドメインと1価塩の静電相互作用について調査する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入予定であった機器(ガラスペルチェプレート)の選定に納得がいかず、次年度に持ち越したため。 26年度の購入予定物品を再検討し、物品の購入を行う。
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