2014 Fiscal Year Annual Research Report
液晶性多糖を用いた力学刺激によるイオン吸脱着システムの創製
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25620139
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
三俣 哲 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (80322006)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 多糖 / 粘弾性 / 液晶 / 逆チキソトロピー / ゲル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
サクランは国内に自生する光合成微生物藍藻から抽出される天然高分子である。自重の6000倍もの水を吸収する性質を利用した応用が期待されている。この特性を最大限に活かすため、サクラン水溶液の粘度、伝導度、誘電率を測定し、様々な濃度における鎖の形態と機能の相関について研究した。濃度4.0×10-3 wt%でc*濃度、2.0×10-2 wt%で絡み合い濃度、4.0×10-3 wt%でゲル化濃度を示し、これらの濃度で上記物性値の濃度依存性が著しく変化する。ゲル化濃度より高い水溶液に一価塩を添加しても電気伝導度の上昇がわずかで塩の吸着を示唆するデータが得られる。低濃度領域では認められないことから、吸着はサクランの液晶のポリドメインと考え、ポリドメインの有無によって粘度がどのように変化するか調査した。サクラン1wt%水溶液は弱いゲル状で、室温、流動が無い状態では液晶のポリドメインを形成する。せん断速度1s-1以上では、定常流粘度が急激に低下するチキソトロピー挙動を示す。偏光顕微鏡観察から、高速流動下ではポリドメインが崩壊し、モノドメイン化することがわかった。これとは反対に、せん断速度を遅くすると粘度が時々刻々と増加する負のチキソトロピー性を示す。しかしながら、低速流動下でもポリドメインが崩壊し、モノドメイン化する。低速領域、高速領域で観察される粘度の相反する挙動を解明するために、流動印加前後での動的粘弾性測定を行った。流動を印加する前の貯蔵弾性率は10Pa程度。流動を印加直後では100Paまで増加する。流動を止めると、およそ80秒で元の弾性率に戻る。低速流動によって、液晶のポリドメインが崩壊し、サクラン鎖が配向する。更に、鎖間で架橋が生じるため、高粘度化するものと考えられる。液晶ドメインの状態が異なる「静置」「低速流動」「高速流動」でイオン吸着に有意差が認められないことから、イオン吸着は鎖間架橋など、ミクロスケールで生じていると考えられる。
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