2014 Fiscal Year Research-status Report
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25620141
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
沼子 千弥 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80284280)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヒザラガイ / 希土類元素 / 濃集係数 / ICP-MS |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄とアルミニウムは化学的性質が類似しているが、鉄が生物にとって必須元素として獲得競争にさらされているのに対し、アルミニウムはほとんど生体内に取り込まれない。本研究では、生物の持つ元素選択的濃縮システムを、環境から効率的に元素回収する新しいとして活用することを目的に、1) 環境中の元素を取り込む生物作用の解析、2) その作用を模倣した非生物系の分離システムの開発、そして3) 同様に3価のイオンとして存在する希土類元素の環境からの回収試験を試みる。本研究では、鉄を主成分とする歯を形成するヒザラガイを用いて、ヒザラガイの歯に取り込まれた希土類元素の起源をその濃度パターンから推測することを試みた。ヒザラガイと海水は、徳島県鳴門海岸において3回採集を行った。ヒザラガイから摘出した歯は濃塩酸に溶解させた後6mol/Lに希釈してから陰イオン交換カラムに通して鉄を除去し、Pをモリブデンイエロー法を用いて、Ca, Mgを元支給光度法により定量した。また、海水とヒザラガイの歯における希土類元素(REE)の定量分析を行うために、同様に主成分の鉄を陰イオン交換カラムで除去した後、硝酸酸性に調製しICP-MSの測定を行った。海水とヒザラガイの歯に含まれるREE濃度を比較したところ、両者はほぼ同じREEパターンをとったが、ヒザラガイの歯からは海水の10万倍のREEが検出された。比較のためにヒザラガイの貝殻のREEも測定を行ったが、炭酸カルシウム質の貝殻でも濃縮率は数万倍であることがわかった。貝殻よりも高い濃縮率を示したヒザラガイの歯にはマトリクスとして磁鉄鉱とリン酸カルシウムが混在するが、今回は双方が共存した状態で分析を行ったために、どちらの成分がよりREE回収に有用かを判断することが困難であった。今後は、レーザーアブレーションMSによる局所分析を行い、この点に関して検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒザラガイの歯や貝殻に含まれる主成分と希土類元素の濃度差が非常に大きいため、いかに主成分の影響を抑えながら分析を進めるか、という点が分析においてポイントとなり、その最適化に時間を要したため、やや当初の計画よりも進行が遅れている。また、希土類元素濃集システムの構築についても、主成分元素をヒザラガイの歯と同様にすると、同じような分析の困難さが生じるため、キチン質のような有機体に効率的に希土類元素を吸着することが可能かどうかの検討を始めた。これは当初の研究計画にはなかった部分であるが、この双方の検討を進めることで、より効率的に研究目標に到達できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでアルミニウム濃集生物は発見されていないが、鉄の濃集システムが存在する生物において、Ⅱの検討でアルミニウムが鉄と同様の挙動をとる組み合わせにおいて、生物でもアルミニウム濃縮が発生する可能性がある。そこで、潮間帯部で廃棄物からのアルミニウムの汚染にさらされる可能性の高い軟体動物や甲殻類を用いてアルミニウムの暴露実験を行い、アルミニウム濃集の可能性の検討、体内でのアルミニウムと相関のある元素の特定、アルミニウム濃集メカニズムの解明、そしてアルミニウムの生体への影響について検討を行う。特に、組織性の高い硬組織部の元素分布については、マイクロPIXEやシンクロトロン放射光を用いた2次元元素マッピングを行い、濃集部位と元素分布との関連についても検討を行う。
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Causes of Carryover |
ヒザラガイの歯に含まれる希土類元素分析に時間を要し、その後の非生物系における希土類元素濃縮システムの構築が遅れたため、それに必要なイオン交換樹脂、透析膜等の購入を行わなかった。また同様に、これに付随する放射光実験等の執行も計画よりも少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
非生物系における希土類元素濃縮システムの構築を全面的に推進し、それに必要なイオン交換樹脂、透析膜等の購入を行い、また研究計画通りの実験を実施する。
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