2014 Fiscal Year Research-status Report
強磁性カーボンナノチューブを用いたセルロース糖化触媒と放射性セシウム除染剤の開発
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25620142
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
太田 和親 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (70160497)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / 液中プラズマ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
以前、当研究室ではマイクロ波加熱を用いた安価で効率的なカーボンナノチューブ(CNTs)の合成法である Ni ナノ粒子法 を開発した。また、CNTs 等にカルボン酸などのブレンステッド酸点を付加したものはセルロース糖化触媒及び放射性 Cs 吸着剤への利用が期待できる。しかし、CNTs にカルボン酸などの酸点を付加するには強酸や過酸化物が必要であるため、 安全面やコスト面、環境面で課題が存在する。そこで我々は、強酸や過酸化物が不要であり水のみを用いる液中プラズマ法 に注目した。液中プラズマ法では・OH や・O が生じ、これが CNTs に付加し-OH や-COOH が形成されるという報告がなさ れており、危険な試薬を用いる必要が無く、また環境負荷をかけることなく酸点が導入できると我々は考え、液中プラズ マを用いてカーボンナノチューブの表面修飾を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CNTsの合成には、炭素源としてポリスチレン、金属触媒として Ni ナノ粒子を用いた。反応条件は 800°C、10 分とした。 CNTs の同定には透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた。TEM 観察の結果、Ni を内包した多層CNTs が確認された。液中プラズマによる表面修飾では液中プラズマ発生装置と冷却管を接続した三口フラスコを組み合わせたものを用いた。液中プラズマ によるCNTs表面への影響は、水に対する分散性、X線光電子分光法(XPS)、 pH 測定により調べた。液中プラズマ処理を行わない CNTsは超音波照射により水に分散させても、3 時間ほどで沈殿してしまった。一方、液中プラズマ処理を行った CNTsでは 5 か月後でも分散性を維持しており、水に対する分散性が劇的に向上していた。よって、液中プラズマ処理によりCNTsの表面に親水性官能基が形成されたことが明らかとなった。官能基を特定するためにXPS測定を行った。液中プラズマ処理前後での C1s 領域における XPS スペクトルを比較したところ、液中プラズマ処理により新たな官能基であるカルボニル基・カルボキシレート基に由来するピークが出現した。O1s 領域においても液中プラズマ処理後にカルボニル基に由来するピークが新たに出現した。また、XPSの各ピークから酸素原子組成を求めたところ、液中プラズマ処理前では 1.83%であったのに対し、処理後には2.88%に増加していた。よって、液中プラズマ処理により含酸素性官能基が形成されたことが分かった。また、この官能基が酸点であるかを調べるため pH 測定を行った。pH 測定の結果、約 1 mmol/g の酸点が確認された。よって、 酸点の形成が確認された。水に対する分散性、XPS、pH 測定の結果から総合的に判断すると、液中プラズマによる表面修飾によりヒドロキシル基・カルボキシル基の形成が示唆された。 以上のように当初の計画をおおむね達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年、水中プラズマ発生装置を暫く借りて実験を行っていたが、返却した。この装置の購入を検討したが、高価で購入できないため、今年酸点付加は従来法の混酸を用いて行う予定である。そして、この酸点付加したCNTsは、今 国家的な大問題となっている放射性セシウムの除染にも大いに役立つものと考えられる。なぜなら、Ni-CNT-(COOH)n は塩基性にすれば、アルカリ金属であるセシウムを塩Ni-CNT-(COOCs)nとして取り込み、これを次に酸性にすればセシウムを溶離させて収集できるからである。酸性下で元に戻った Ni-CNT-(COOH)nは、磁石にくっつくため容易に回収でき、さらに酸アルカリに安定なので繰り返し使用できる。今年度はCs金属の吸着と脱着の研究を進める。 なお、非放射性セシウムも放射性セシウムも化学的な性質 は同じであるため、本研究には非放射性セシウムで実験する計画である。被曝の心配はない。
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Causes of Carryover |
当初計画では、液中プラズマ装置の購入により研究を進める予定であったが、レンタルが可能になり経費を抑えることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度、12月にハワイで開かれる国際会議で、本テーマで招待講演を行うので、その時の旅費として次年度使用額とH27年度分を合わせて使う予定である。
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