2013 Fiscal Year Research-status Report
水素・メタン発酵消化液中のイオン浮選によるリン回収
Project/Area Number |
25620144
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
佐藤 公俊 日本大学, 工学部, 講師 (90215773)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | リン酸 / メタン発酵 / イオン浮選 |
Research Abstract |
吸光度法、陰イオンクロマトグラフィー法の2つの分析法を用いて消化液中のリン酸イオン量について測定を行った。食品残渣を原料とする中温発酵式のメタン発酵槽から得られた消化液を用いて分析を行った結果、今回使用した消化液の99.4 %が水および水溶性成分であり0.6 %が固体の微細残渣であった。ろ過前の消化液の全りん量(P2O5換算)は98 mg/Lであるのに対し、ろ過後の消化液中のリン酸イオン量は59 mg/L(P2O5換算)88 mg/Lであった。このことから、消化液中に0.6 %含まれる固形残渣に全体の約10 %のりんが含まれていることがわかった。また使用した消化液はリン酸イオン量が少なく、畑への農地還元ではりん肥料としての効果が少ないことがわかった。 固形残渣のFE-SEMの観察により、りんは局所的に存在しており、10μm前後の棒状の固体として存在していることを見出した。元素分析によりカルシウムとリンが同時に存在し、40℃という中温発酵であることからリン酸イオンの一部が発酵過程でリン酸カルシウムに変化していることが分かった。残渣中のリン酸カルシウムのCa/Pが1.70であったこと、発酵槽でのpHが7.9であることから Ca10(PO4)6(OH)2を主とする形態で存在している可能性が高いことがわかった。形成されるリン酸カルシウムは水溶性が低く、微細固体として存在していることから、イオン浮選による分離の可能性は高くなった。またリン酸イオンを捕集するのに吸着剤などを用いずとも分離できるというのは利点であると考える。 得られた結果の一部を日本分析化学会の第74回分析化学討論会にて発表予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学内の小型発酵装置から得られる発酵消化液を利用して実験を進めていたので、消化液量が少なく十分な測定をすることができなかった。しかし、中型発酵槽を持つ学外の民間業者からの協力を得ることができ、実験に十分な発酵消化液量が確保できるようになったので今後はその影響はないと考える。 発酵残渣の消化液の混雑物が多くそれによる粘性が高く、直接イオン浮選を行うことは困難であった。さまざまな試みを行った結果、遠心分離器を導入し、水洗浄と遠心分離を繰り返すことで微細固体を取り出すことが可能となった。この手法を見出したことでイオン浮選への検討をようやく行える状況となった。 予定であった陽イオン分析が行えなかった。陽イオンクロマトのカラムが劣化し、測定困難であった。カラムを新たに購入したので今後は検討を行えると判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
混雑物の粘性等の影響が予想より大きく、擬似消化液を作成しても実際とかけ離れた結果となることが予想されることから、当初の予定から変更し実際の消化液を使用しての検討に変更する予定である。 現在のところ、メタン発酵の消化液についてのみ検討を進めている。水素発酵の消化液についても消化液を得て検討したいが入手が困難である。現在のメタン発酵装置でも初期段階で水素発酵が生じていることから、このままメタン発酵の消化液について進める予定である。水素発酵のみの消化液については、さらに先の検討へと変更の予定である。 そのため、平成26年度、平成27年度の研究については、実際のメタン発酵消化液を用いる以外は大きな変更の必要はないと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画通り、平成25年に見出した消化液中のリン酸イオン評価法の確立を行った。平成26年度には引き続き、イオン浮選法の最適条件見出す実験を行うので使用額が必要である。 イオン浮選は、使用する装置によって分離能力が変化する。仕込み液量、空気量、泡沫層高さ、温度等を理論値と実験値から最適な回収条件を見出す。そのためには装置を実際に組み立てが必要である。その装置を用いて、複数のメタン発酵消化液を用いてリン酸回収を行い、その回収能力を評価する必要がある。他のリン酸回収法との比較を行う。そのため平成26年度には、イオン浮選装置、器具・試薬の費用を計上している。また研究成果の発表にも旅費が必要となる。 当初計画通り、平成26年度にはイオン浮選法の最適条件見出す実験を行う。平成25年度に得られた消化液中の微細なリン酸カルシウムをイオン浮選で回収する時に必要となる分離に必要となる条件を見出し、実際に装置の組み立てを行う。 その装置を用いて複数のメタン発酵消化液を使用してリン酸回収を行い、理論値との相違をあきらかにするとともにさらに回収の最適条件を見出す。その回収能力を他のリン酸回収法と比較し評価する。 それら得られた研究成果報告は、国内学会にて発表予定である。
|