2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25620150
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
奥村 英之 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (80362573)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 温度依存 / 磁場効果 / 再現性 / 酸化亜鉛 / 光触媒 / 溶存酸素 / 磁場吸着 / メチレンブルー溶液 |
Research Abstract |
不確定要素の多い光触媒磁場効果(MFE)を再現性よく得られることがまず最も大切であったが、その点、[再現性の高いMFE」については、確認が得られ、次のステップへと進んでいる。 これは、MFEの温度擾乱に対する綿密な制御が一つの鍵であったが、それについて様々な工夫により細心の注意を払った循環冷却システムを組むことでMFE制御に成功し、ほぼ連続的に光触媒色素分解が磁場影響下で測定できるようになり、この新しいシステムを利用してMFEの温度依存について重要な知見が得られつつある。また磁場の大きさによる光触媒の変化や溶存酸素の影響についても、少しずつデータがそろいつつある。 一方、スピントラップ剤を用いたラジカルの同定については、ESR測定も含めて、まだその方法を確立したとは言いがたく、溶液中の各活性酸素などMFEに影響を与える可能性が高い要因物質を定量的に検出するため、捕捉剤の更なる検討とも関連させて、今後も技術等の習熟と研鑽が必要である。また、酸素の三重項状態と励起一重項状態との判別を化学発光検出によって行う予定であったが、補助金の減額や光学システム設計の問題等もあり、それ以外の磁場依存や酸素濃度依存、温度制御、被分解物質によるMFEの変化、などに現在重きを置いている。 これらを総合すると、当初の実施計画から遅れはあるものの、方向を少し転換したこともあり、研究は比較的順調に進んでおり、興味深い結果が得られつつある段階である。なお、今年8月末にはアメリカで開催される環境触媒の国際学会(ICEC2014)にて、これらの内容を基本とした光触媒磁場効果に関する基調講演を行うことになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず、獲得補助金の減額により、購入できる装置や物品、全体の流れの見直しを行ったこと、そして当初購入を予定していた近赤外光電子倍増管[浜松フォトニクス、H10330A-45]による酸素の励起一重項状態から三重項状態への遷移による化学発光検出(波長1270 nm放射)の方針は、獲得金額以外にも光学システム設計の問題等もあり、変更せざるを得なくなった。 また、大学(京都大学)の耐震改修工事およびイノベーションセンター工事のため、MFE研究装置の大半が設置されている建物(工学部6号館)から二度も避難せざるを得なかった状況も、綿密な実験条件の設定が不可欠なMFE研究に大きな悪影響を及ぼした。部屋の湿度や温度の詳細な管理だけでなく、測定装置の移動や再設定など、あらゆる面において、研究がしばらくの期間中断をせざるを得なかったのは誠に残念である。 スピントラップ剤を用いたラジカルの同定については、ESR測定も含めて、その方法の確立が当初の予定より難しかったため、今後の習熟と研鑽が必要である。 ただし、「研究実績の概要」既述のように、再現性の極めて高いMFE、そしてその温度依存性が得られており、国際学会で基調講演を要請されるほど興味深い内容が現時点で存在するのは特筆に価する。
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Strategy for Future Research Activity |
MFEの調査が行われた条件は限定的であり、その機構解明についてはまだ手付かずの状態である。今後、溶存酸素(DO)やその他のMFE現象と絡んだラジカル種を特定し、現象解明を目指す。例えばDOは光触媒表面で様々な活性酸素(●O2-、●OOH、●OH、一重項酸素1O2、過酸化水素H2O2等)になるため、これらの各状態を準定量的に調べる必要がある。しかしこれら多くは短寿命で分光学的特徴も乏しいため、プローブ化合物と反応させ、より長寿命で検出しやすい化学種に変換する間接法を用いる。OHラジカルはテレフタル酸やクマリンとの反応で生成するOH付加体の蛍光強度を測定し、● O2-はMCLAやテトラゾリウム塩WST-1を用いて定量的に同定し、その他にもルミノール反応や様々な定量的検出試薬を総合的に組み合わせ、各ラジカルを出来るだけMFE反応で実際に生成している状態で準定量的に判別できるよう、様々な工夫を行う。さらに、DMPO等スピントラップ剤とESR測定によるラジカル同定も併用しながら、捕捉剤の更なる検討とも関連させて、ノウハウ技術の習熟と研鑽を引き続き行う。 そして光触媒材料および被分解物質の種類はいくつか変更し、それによるMFE変化を調べ、その原因を究明してMFE機構の解明を目指す方針である。 さらには、光の吸収を行う固体表面の状態変化、不均一系の特徴である溶液中の分子移動や表面吸着等、複雑に相互作用しながら粉末表面ポテンシャルを変化させる因子を考慮に入れ、磁場の影響を調査する。ゼータポテンシャル計により表面ポテンシャルを測定し、磁場吸着とMFE発現との関連性を調べ、様々なパラメータ変化を行いつつ、最終的に均一系MFE反応機構と比較しながら不均一系MFE現象の解明を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
獲得補助金の減額により、購入できる装置や物品、全体の流れの見直しを行ったこと、そして当初購入を予定していた近赤外光電子倍増管による一重項状態酸素からの化学発光検出の方針は、獲得金額以外にも光学システム設計の問題等もあり、変更せざるを得なくなった。 また大学の耐震改修工事およびイノベーションセンター工事のため、MFE研究装置が設置されている居室から二度も退避せざるを得なかった状況も、綿密な実験条件の設定が不可欠なMFE研究に悪影響を及ぼした。部屋の温湿度の精密な管理だけでなく、測定装置の移動や再設定など、あらゆる面において、研究がしばらく中断せざるを得なかったのは誠に遺憾である。 なお、スピントラップ法とESR測定を用いたラジカル同定については、分子科学研究所の施設利用(ナノプラット)申請が承認されたため、ESR装置利用代金は本研究の他の用途に使用できることとなった。 再現性の高いMFEとその温度依存性が得られており、今年8月にはアメリカの環境触媒国際学会で基調講演を行う事になっている。そのため渡航費用等は当初予定より大きくなる。今後、MFE機構解明を目指し、様々な関与ラジカル種を準定量的に特定するため、多くのプローブ化合物を購入し、間接法により蛍光強度等を測定する。 再現性の高いMFE実験が確立されたため、C型磁気回路を数種購入し、磁場を変化させてMFE機構解明を行う。また、少し高額ではあるが正確で速い測定が可能な蛍光式酸素ブローブを購入し、磁場効果との関連性調査をより迅速に行う。 光触媒材料および被分解物質、そして担持材も新たに数種類購入し、MFE変化を調べ、その原因を究明して機構解明の一助となす。粉末表面ポテンシャル測定は、緩衝溶液を数種購入し、磁場吸着とMFE発現との関連性も調べ、最終的に均一系MFEと比較しながら不均一系MFE現象の解明を目指す。
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