2014 Fiscal Year Annual Research Report
PAH-遷移金属ハイブリッド化合物を基盤とする新電子材料開発
Project/Area Number |
25620158
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
渕辺 耕平 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (10348493)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 有機半導体 / フッ素 / 多環式芳香族炭化水素 / 環化反応 / 触媒 / パラジウム / インジウム / プリンタブル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題ではまず、フッ素置換アルケン類の特異な反応性を利用して、種々の多環式芳香族炭化水素(PAH)の触媒的合成を実現した。 第一に、1,1-ジフルオロアレン(CF2=C=CR1R2)に臭化インジウム触媒を取り合わせ、その求電子的活性化をトリガーとするドミノ反応(連続反応の一種)を開発した。これらの反応により、位置選択的にフッ素置換したPAH(ピンポイントフッ素化PAH)を高収率で合成した。第二に、1,1-ジフルオロアルケン(CF2=CR1R2)の求電子的活性化にも挑戦した。この場合、触媒としてはカチオン性パラジウム種が適しており、用いる1,1-ジフルオロアルケンに応じたピンポイントフッ素化PAHを高収率で得ることに成功した。 これらピンポイントフッ素化PAHと遷移金属とのπ錯体はいずれも不安定であり、本研究課題の目的の一つであったこれらの単離は困難であったが、その一方でピンポイントフッ素化PAHそのものが、高溶解性有機半導体化合物として動作することも、明らかとした。 すなわち、フッ素置換基は種々の特異な電子的性質を有しており、ピンポイントフッ素化PAHには耐酸化性・溶解度・電荷移動度の向上等が見込まれた。そこで、合成した一連のピンポイントフッ素化ピセン(5個のベンゼン環がジグザグ状に連結)を題材にそのキャリア移動度を測定したところ、13-フルオロピセンにp型の半導体特性が発現することが確認された。一方、一連のピンポイントフッ素化ピセンの有機溶媒への溶解度を測定したところ、フッ素非置換ピセンに比べて最大で25倍という高い溶解度が見られた。有機半導体化合物の溶解度は、プリンタブルな電子デバイス作成を実現する上で、きわめて重要な性質である。
|