2013 Fiscal Year Research-status Report
自動分解性シリカの創出と有機-無機ハイブリッド材料のリサイクル技術への応用
Project/Area Number |
25620162
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中條 善樹 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70144128)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ハイブリッド |
Research Abstract |
有機-無機ハイブリッド材料は、ガラスの高い安定性と高分子の機能性を併せ持つ有用な物質である。一方、ガラス成分は化学的に不活性であることから、形成後の加工や修飾が難しい。特に、リサイクル性に乏しい。この問題を解決するために、光駆動型自動分解高分子を第三成分として混在させる系を考えた。特定の光照射により自動的に主鎖の分解が起こり始め、結果として特にガラス成分を分解させることを狙う。本研究を進めることで、ハイブリッド材料に微細加工性とリサイクル性を付与することを目標とする。 高分子とガラスを分子レベルで混合させることで、安定性と機能性が両立した有機-無機ハイブリッド材料が生まれる。特に、発光性高分子を有機部分に用いることで、柔軟な光源や耐久性の高い光学素子への応用が期待される。申請者は現在まで、有機色素含有高分子とシリカを混ぜ合わせ、安定な白色発光素子や高輝度発光体の作成を行ってきた。一方、ハイブリッド材料はガラス成分に由来した高い安定性から、形成後の加工や修飾が難しい。特に、微細加工や材料内部での機能の位置的制御は困難であり、精密な光学素子の足場材料としての応用には課題が多い。また、廃棄物のリサイクルも困難である。ハイブリッド材料の有用性や産業的価値を高めるため、本研究テーマを着想するに至った。 UV光照射により自動分解する高分子の合成と、それらの自動分解性高分子を第三成分として含む有機-無機ハイブリッド材料作成を行う。UV光照射前後における耐熱性、機械的強度、色素内包による漏えいの度合い、濁度について評価を行う。応用例として、汎用高分子+ガラス+自動分解高分子のハイブリッド材料を作成し、汎用高分子の回収量の比較を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
A. モノマー合成 現在、TMS保護基を有するモノマーについては合成を完了しており、重合反応後までの溶解性の確保、並びに脱保護の進行も確認している。また、光照射による分解性を評価するために、機能性分子を導入したモデル化合物の合成も行った。光解離性基が分離した後、速やかに分解することが重要である。分解速度が低い場合、電子供与基の導入により、反応速度の向上についても検討した。 B. 自動分解性高分子の合成 重合反応は上記で得られたモノマーを用い、スズ触媒下、加熱条件下で行った。アミン末端に光解離性基を導入するため、反応の終点にはニトロベンジルアルコール類を添加した。現在、無置換モノマーを用い重合条件を検討したところ、約20量体の物質生成を確認している。脱保護後の溶解性を鑑み、反応時間・温度・触媒について最適な鎖長を得るための重合条件の検討を行った。鎖長の伸長に伴い、溶解性の低下が観られた。また、シリル保護基の脱保護後においても、さらなる溶解性の低下が観られた。よって、10量体程度のオリゴマーを用いることを検討した。また、光解離性基の導入効率が100%でないことも課題として挙げられた。本テーマでは長鎖の生成物は必要でないことから、重合反応の最初から添加することで、導入効率の向上を図った。現在、80%程度まで末端修飾率の向上を達成していることから、引き続き重合反応条件の最適化を検討する。 C. UV光照射による自動分解性高分子の分解挙動の調査 モデル化合物と得られた高分子を用いて、光照射後の分解過程を調べた。オルトベンジルアルコールは光反応後にはニトロソ化合物となることから、紫外可視光吸収スペクトルで反応率を計測できた。
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Strategy for Future Research Activity |
A. ハイブリッド材料作成 自動分解性高分子と汎用性高分子、テトラエトキシシランを混合することにより、自動分解性高分子含有有機-無機ハイブリッド材料の作成を行う。透明で均一な材料を得るために、温度、触媒、アルキルトリアルコキシシランの利用など、ゾルゲル法における反応条件の最適化を検討する。得られた材料の可視光領域での光吸収から透明度を算出することと、熱分解温度の測定からハイブリッド化の度合いを見積もる。合成と基本物性の評価に関しては申請者の以前までの研究で得たノウハウを元に、順次作業を進めていく。自動分解性高分子を分解させずにハイブリッド材料を作成することが課題である。酢酸など弱酸性条件下、迅速加熱が可能な電子レンジを用い、自動分解性高分子の分解を抑制することを検討する。 B. ハイブリッド材料の崩壊反応の検討 UV光を照射した後、材料の性質を調べる。TGAによりハイブリッド材料の熱分解温度を算出するとともに、UVにより内部の自己分解性高分子の分解率を調べる。高分子が溶解する溶媒にハイブリッド材料を浸し、内部の高分子の漏出挙動を調べる。光反応時間や自動分解性高分子含有量と崩壊に必要な光反応の時間を調べることで崩壊反応を定量的に捉える。最終的には、光照射時間を短縮するために、ハイブリッド材料作成時の自動分解性高分子の仕込み量やハイブリッド作成条件の最適化を検討する。 C. 汎用高分子のリサイクル性の検証 ポリエチレンテレフタレート(PET)等、産業的にリサイクルの必要性が高い高分子を用いたハイブリッド材料により、同様の実験を行う。特に、PETの再利用では添加物の分離が問題となるが、本研究で簡便に高分子の再回収ができることを示せれば、ハイブリッド化がPETの高機能化の有力な選択肢の一つになると期待されることから、是非成功させたい。
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Research Products
(7 results)