2013 Fiscal Year Research-status Report
極限微小空間におけるハイドロゲルの体積相転移及び揺らぎの臨界現象の解明
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25620171
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
佐藤 高彰 信州大学, 繊維学部, 准教授 (20373029)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ポリイソプロピルアクリルアミド / ゲル微粒子 / 小角広角X線散乱法 / 相関長 / 臨界挙動 / 誘電分散 / 疎水性相互作用 |
Research Abstract |
本研究は、沈殿重合法によるポリイソプロピルアクリルアミド(pNIPAm)ゲル微粒子の重合を制御し、過去に類例のない50nm以下(球状蛋白質と同等の10nmレベルが目標)の極限的に微小なゲル微粒子を合成、その臨界挙動の解明を短期で行うものである。今年度は、極小サイズのゲル微粒子の合成法の確立と並行して、架橋していないpNIPAm溶液の臨界挙動を溶媒の同位体効果も含め詳細に検討した。まず、pNIPAmの臨界挙動のミクロな側面を理解するために、小角広角X線散乱法(SWAXS)を用い、散乱ベクトル領域を0.07<q/nm-1<23に拡張し、水と重水中で絶対強度測定を行った。 pNIPAmの相関長と前方散乱強度は臨界温度Tc(~32度)に向けて発散するが、溶媒リッチ相とポリマーリッチ相にミクロな相分離を生じることに関係する。平均場モデルで予測されるよりやや小さい臨界ベキ指数を得たが、これは中性子散乱(SANS)による既往研究と整合性のある結果である。本研究では、新たにq = 3-6nm-1と15nm-1付近に干渉性ピークの出現を見出した。既往のSANS研究では、散乱べクトル領域がq < 2 nm-1に限定されていたために、観測されていなかった特徴である。広角側のピークは高分子鎖内の原子間距離分布、つまり動径分布関数の効果に起因すると考えられる。低角側の干渉ピーク位置から計算した特徴的距離の温度依存性は、イソプロピル基の疎水性相互作用による主鎖間距離の減少を反映している。一方、Regensburg大学のBuchnerグループと共同して行ったマイクロ波・ミリ波誘電分光測定では、温度上昇に伴うpNIPM鎖の脱水和挙動が明確に観測された。このように、ゲル微粒子の臨界挙動解明へ向けた礎石となる成果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)沈殿重合法によるpNIPAmゲル微粒子の重合を制御し、50nm以下の極限的に微小なゲル微粒子の合成法を確立できそうな段階であること、(2)ゲル微粒子の臨界挙動を理解する礎石となるpNIPAmの溶液中の臨界挙動を水と重水を用い、類例のない広大な散乱ベクトル領域を網羅し、完全に同一の測定条件で溶媒の同位体効果も含め詳細に検討することに成功したこと、さらには、(3)マイクロ波・ミリ波領域の誘電分光法を用いて、疎水性水和とpNIPAmの脱水和挙動を分子ダイナミクスの立場から、分子レベルで把握できたことから、計画通りに順調に研究が進展したと判断できる。次年度のゲル微粒子の臨界挙動解明に向けた第一段階が首尾よく完成した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に確立しつつあるゲル微粒子合成法を発展させ、架橋密度やサイズを変化させたゲル微粒子を合成、小角広角X線散乱法によって、これらの臨界挙動を観測し、系統的に比較検討する。これらの結果を、初年度のpNIPAm溶液の結果や既往のバルクゲルの結果と比較することで、ゲル構造をゲルネットワークの相関長と比較して10~100倍程度の微小空間内に制限した場合、臨界温度付近で相関長や密度揺らぎの大きさが如何なる臨界挙動を示すか?という本質的な疑問を解決する。ミクロ空間内の体積相転移は、バルクゲルの場合と同様に、イジング模型や気相液相転移の普遍性と一致するのかと言った問題に明確な答えを与えることが最終目標である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画は順調に推移したが、高分子溶液の詳細な検討が初年度の主要な課題となったこと。また、連携研究者のグループから十分な協力も頂いたため、合成手法などに関連する専門知識の供与やルーチンの分析などに謝金等を要することなく、研究を行うことが出来たため、次年度使用額が生じた。 次年度は、サンプル購入、散乱測定に関連する備品や、論文出版、国際会議発表などにバランス良く予算を使用し、当初の目的を達成する研究成果をあげるよう努力する。
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Research Products
(2 results)