2013 Fiscal Year Research-status Report
フォトクロミック材料の動作メカニズムの解明:単一分子計測によるアプローチ
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25620173
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
青木 裕之 京都大学, 先端医工学研究ユニット, 特定准教授 (90343235)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アゾベンゼン / 物質移動 / 単一分子計測 / 顕微鏡 / 分子運動 / 表面レリーフ |
Research Abstract |
本研究はアゾベンゼンを含む高分子材料への光照射によって形成する表面レリーフの形成メカニズムを分子レベルで明らかにすることを目的としている。試料として、アゾベンゼン誘導体であるDisperse Red 1を側鎖に有するメタクリレート系高分子PDR1MAを用いた。本年度では表面レリーフ形成の温度依存性を精緻に評価するために、クライオスタットを導入し、その中で干渉露光が可能な光学システムを構築した。その結果、レリーフは390 K以上の温度範囲では形成速度が著しく低下することが分かった。またPDR1MAの動的粘弾性測定を行ったところ、395 Kにガラス転移点を示した。これよりレリーフ形成はガラス転移点以下の温度で行われることが示された。 次年度に計画している、表面レリーフ形成下での分子レベルのダイナミクスの評価を行うために、PDR1MAに干渉露光を行いながら、同時に光褪色後蛍光回復法(FRAP: Fluorescence Recovery After Photo-bleaching)による分子運動性の評価を行うことのできる顕微鏡の構築を行った。波長473 nmのレーザービームをMach–Zehnder型の干渉計に入射することで干渉パターンを形成し、これをダイクロイックミラーによって蛍光顕微鏡の励起照明光(波長635 nm)と同軸で入射した。このような顕微鏡光学系を開発することによって、試料上に2 μm間隔の干渉縞を露光しながら、蛍光顕微鏡観察を行うことができるようになった。さらに高出力の半導体レーザーと電磁シャッターを導入し、試料の瞬間的な褪色後の時間変化を追跡するFRAP測定を行うことのできる顕微鏡を作製した。これにより、PDR1MAの表面レリーフ形成過程における分子のダイナミクスを直接追跡することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マクロスケールでの表面レリーフ形成は計画通りに行うことができ、その温度依存性を詳細に検討することができた。これと並行して、レリーフ形成時の分子の運動状態をin situ測定する顕微鏡システムを構築することができ、またPDR1MAのダイナミクスの測定を開始することができた。これらは概ね当初の計画通り進行していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
表面レリーフ形成過程における分子運動の様子を、本年度に開発した顕微鏡システムを用いることで直接的に評価することを試みる。また単一分子レベルでのダイナミクス評価を行う予定である。そのための最適なプローブ分子の選定を行い、顕微鏡を用いた分子の動態の直接観察を通して、PDR1MAの光誘起物質移動現象のメカニズムを考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画時に購入を予定していた物品について、本年度内に同等性能かつ安価なモデルが販売開始となり、こちらを購入したため。 開発した顕微鏡システムにおいて、試料上の照明領域のサイズを調整する必要が生じたため、そのための光学系構築のための消耗品購入に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)