2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25620176
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
春藤 淳臣 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40585915)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 敬二 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20325509)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | レオロジー / 不均一性 / ソフトマテリアル / 粒子追跡法 |
Research Abstract |
本研究では、独自にセットアップした光ピンセットを用いて、重合過程における局所領域の粘弾性関数を測定する。連鎖重合系において局所粘弾性関数の周波数依存性を評価し、緩和時間を算出する。また、リビング重合系においては、局所粘度に基づき平均分子量に関する情報を抽出する。緩和時間および分子量をそれぞれの重合系中の空間座標に対してマッピングし、重合の進行に伴い(1)高分子の絡み合いがどのように発展するのか、あるいは(2)高分子がどのように生長するのかを明らかにする。さらに、重合系中における分子量の空間的な不均一性を、最終的に生成した高分子の分子量とその分布と比較・検討し、それらの相関を明らかにする。平成25年度に実施した具体的な項目と主な研究成果を以下にまとめる。 (1)光ピンセット装置の改良:サイズの小さな粒子の変位を精度よく検出するため、蛍光ユニットをセットアップし、微粒子からの蛍光を四分割フォトダイオードにて検出できるようにセットアップした。また、ステージと対物レンズにそれぞれサーモスタット制御のヒーターを付属し、温度制御が可能であることを確認した。種々の温度において、紐状ミセル水溶液のG′およびG″を周波数の関数として測定し、緩和過程における見かけの活性化エネルギーを算出した。その結果、算出した値は、レオメーターによって求めたバルクの値とよく一致した。 (2)高分子溶液のゾル-ゲル転移過程における不均一性:高分子溶液に分散した微粒子の熱運動を解析し、ゾル-ゲル転移過程 (固化プロセス) における不均一性を評価した。その結果、ゾルからゲルへの過程はマイクロスケールにおける物性の不均一化を伴って進行することを明らかにした。また、蛍光ユニットと高感度カメラを用いることによって、サイズの小さな微粒子 (直径50 nm程度) の熱運動を精度よく検出できることも確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的・実施項目として、初年度に(1)光ピンセット装置の改良、および(2)局所領域における粘弾性関数の評価、また次年度に、(3)重合過程における緩和時間および(4)分子量の空間マッピング、(5)重合系中における分子量の空間不均一性と高分子の一次構造(分子量とその分布)との相関検討を設定した。 平成25年度は当初の計画に従って、実施項目(1)光ピンセット装置の改良を行った。また、実施項目(2)紐状ミセル水溶液の局所領域における粘弾性関数を評価し、セットアップを検証した。さらに、重合過程のモデル実験として、高分子溶液のゾル-ゲル転移過程に着目し、系中の異なる場所に存在する微粒子の熱運動を解析することによって、ゾル-ゲル転移過程における空間不均一性を評価した。 当初の計画通りに研究を進め、期待通りの結果・知見を得ることができた。また、それに加えて、高分子溶液のゾル-ゲル転移に伴う不均一化など新たな現象を見出した。研究成果の一部は学会にて発表済みである。以上の理由により、おおむね順調に研究が進展したと判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の目的・実施項目として、(1)光ピンセット装置の改良、および(2)局所領域における粘弾性関数の評価、(3)重合過程における緩和時間および(4)分子量の空間マッピング、(5)重合系中における分子量の空間不均一性と高分子の一次構造(分子量とその分布)との相関検討を設定した。平成25年度は、実施項目(1)および(2)を実施した。平成26年度は、これまでの知見をもとに、実施項目(3)、(4)および(5)を重点的に行う。 アクリル酸のラジカル重合およびRAFT重合過程における局所粘弾性を評価する。緩和時間や分子量を重合系中の空間座標に対してマッピングし、空間不均一性の可視化を検討する。不均一性の程度と最終的に得られた高分子の分子量およびその分布とを比較・検討し、生長反応の空間的な不均一性が最終的に生成した高分子の一次構造に及ぼす影響を明らかにする。 微粒子の熱運動解析による重合系中の不均一性評価についても検討する。系中の異なる場所に存在する微粒子の熱運動を解析することによって、空間不均一性に関する知見が得られることをすでに確認しており、実験遂行に支障はない。また、この方法では、直径が数十nm程度の微粒子をプローブとして用いることも可能である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題の遂行には光ピンセットの改良が必要不可欠であり、粒子の変位を精度よく検出するため、落射型蛍光ユニットを購入する予定であった。しかしながら、現有の光学部品を組み合わせることによって、精度の良い検出が達成されたため、未使用額が生じた。未使用額は、H26年度に実施する重合過程に関する検討に必要な物品費に充てることとする。 H25年度にサーモスタット制御のヒーターを光ピンセット装置に導入し、試料の温度制御が可能であることを確認した。より精度良い温度制御を達成するため、試料ステージ用の温度制御装置を購入する予定である。また、重合に必要な種々の試薬、溶媒、ガラス器具類の購入を予定している。とくに、物性の空間スケールを議論するためには、様々なサイズの蛍光プローブ粒子の購入も必要である。 挑戦的な本申請課題の遂行には、高分子化学、材料科学、レオロジ―などの多角的な知見が必要不可欠である。成果発表を兼ねた情報収集や討議のため、国内外の学会参加を計画している。
|
Research Products
(17 results)