2013 Fiscal Year Research-status Report
溶媒和マグネシウムイオンの構造とイオン液体中における電気化学活性
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25620181
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
獨古 薫 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (70438117)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 無機工業化学 / 元素戦略 / 電池 / めっき |
Research Abstract |
平成25年度は、金属Mgの電析が可能な電解液のスクリーニングを行った。グリニャール試薬や、臭化マグネシウム(MgBr2)を高濃度で溶解させたエーテル系電解液中で金属Mgの電析が可能であることを確認した。これらの電解液中では、グリニャール試薬やMgBr2の電離度は極めて低く、イオン伝導率は0.1mS/cm程度と低いため、金属Mgの電析反応は、電気化学セル中のイオンの泳動過程が律速することが分かった。このため、これらの電解液中にMgの電析反応に関与しない支持塩を添加し、電解液のイオン伝導率を向上させた。その結果、金属Mgの電析反応の反応速度を増大させることに成功し、大電流で金属Mgの電析を行うことが可能となった。これは、電解液のイオン伝導率の向上により、律速段階がイオンの泳動過程ではなくなり、界面電荷移動過程および拡散過程が反応を律速するようになったためであると考えられる。 また、室温における非水電解液中での金属Mgの電析過程は不明な点が多い。電解液中におけるMg塩の溶媒和構造が電極/電解質界面における電荷移動反応過程に影響を及ぼすと考えられる。そこで、平成25年度は、室温の非水電解液中におけるMg2+イオンの溶媒和構造の解析を試みた。Mg(TFSA)2〔TFSA: bis(trifluoromethanesulfonyl)amideアニオンの略〕をエーテル系溶媒であるグライム類と混合して電解液を調製し、この電解液中におけるMg2+イオンの溶媒和構造についてラマン分光法により検討した。その結果、Mg2+イオンにグライム分子が溶媒和し、錯カチオンを形成していることがわかった。さらに、電解液中ではMg2+の形成する強い電場によりTFSAアニオンが引き付けられ、コンタクトイオンペアを形成しやすいことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従い、室温において金属Mgの電析が可能な電解液のスクリーニングを行い、グリニャール試薬や、臭化マグネシウム(MgBr2)を高濃度で溶解させたエーテル系電解液中で金属Mgの電析が可能であることを確認した。また、従来報告されている電解液中では、電極反応が電解液中の泳動過程によって律速されていることを明らかにし、電解液に支持電解質を加え、電解液のイオン伝導性を向上させることにより、金属Mgの電析反応速度の向上にも成功している。 さらに、電解液中におけるMg塩の溶媒和構造の解析についても分光学的な手法を用いて着手しており、電解液中における溶媒とイオンの相互作用およびイオン対形成などが明らかになりつつある。室温の非水電解液中におけるマグネシウム塩の電離や、Mg2+イオンとエーテル系溶媒の錯形成およびそのダイナミクスが、Mg2+イオンの電気化学反応過程に及ぼす影響を今後詳細に検討するための基礎データが着実に集積されつつある。今後、マグネシウム塩を構成するアニオンの種類や溶媒種(室温イオン液体をを含む)がMg2+イオンの溶媒和構造やイオン対形成状態に及ぼす影響をさらに検討することにより、これらが溶媒和マグネシウムイオンの電気化学活性に及ぼす影響を明らかにする予定である。よって、本研究は当初の計画どおり、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
Mg2+などの多価カチオンが関与する界面における電荷移動(多価カチオン移動)過程を明らかにすることは学術的にも極めて興味深い。平成26年度は、電解質中におけるMg化学種の拡散過程や界面電荷移動過程について定量的に解析し、電解質溶液のイオン伝導度や電解質組成(溶媒の種類や支持塩)が電極反応速度に及ぼす影響について詳細に検討する。具体的には、マイクロ電極を用いた高速ボルタンメトリーの測定や電気化学インピーダンス測定などにより、界面電荷移動速度の評価やこれに及ぼす電解質組成の影響について検討する。電解液組成(電解質の種類、濃度)を様々に変化させることにより、電解液(室温イオン液体を含む)中におけるMg2+の溶媒和構造やイオン種間の相互作用が界面電荷移動過程に及ぼす影響を検討する。 また、平成26年度は、Mg電析が可能な電解液中(室温イオン液体を含む)におけるMg2+カチオンの錯形成や溶媒和構造について解析を進める。NMR法、ラマン分光法、X線を用いた手法により、Mg2+カチオンの錯形成や溶媒和構造が電極反応過程に及ぼす影響を明らかにする計画である。これにより、非水電解液(室温イオン液体を含む)におけるMg2+カチオンの構造とその電気化学的な活性の相関を明らかにし、Mg系二次電池やMgめっきプロセスに適した電解液の設計指針を得る。
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Research Products
(3 results)