2013 Fiscal Year Research-status Report
DNAの構造柔軟性をもった金属および半導体ソフトマターの創出
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25620183
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村田 静昭 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (50157781)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | DNA / 金属ナノ粒子 / 半導体ナノ粒子 / 硫化カドミウム / 金 / 無機化DNA / 金属化DNA |
Research Abstract |
金属や半導体から構成されたナノ粒子に柔軟性と秩序ある構造変化を起こす自己組織化の能力をもった新物質を作り出すことを目的に、DNA凝縮剤との相互作用によりDNAの折り畳みと、それに伴う秩序ある折り畳み構造体の形成に関する以下の(1)~(3)のような研究を実施し成果を得た。 (1) DNAの無機化:サケの白子から抽出した平均重合度2万のDNAに、水溶液中で金属(金・銀・白金・パラジウム・銅・ニッケル)イオンを吸着させ、これをホウ水素化ナトリウムで還元することでDNAを鋳型として金属を析出させることができた。しかし、水素よりイオン化傾向が大きいニッケルの場合、一旦生じた黒色の物質は水に溶解し目的とする金属化DNAを単離するには至らなかった。同様にしてカドミウムイオンを吸着したDNAにS2-イオンを作用させ、硫化カドミウムを析出させた無機化DNAを得た。 (2) 無機化DNAの折り畳みと柔軟な無機化DNA の調製:カドミウムイオンを吸着したDNAまたは硫化カドミウムによって無機化されたDNAは、DNAに対するカドミウムイオンのモル比に応じて、しなやかなコイル状態から折り畳まれたグロビュール(顆粒)状態へと変化することが蛍光顕微鏡観察で確認できた。 (3) 電子顕微鏡による無機化DNAの評価:得られたコイル状態の無機(CdS)化DNAは、平均直径12 nmほどのワイヤー状の物質で、DNA高分子鎖上に直径3~5 nmの硫化カドミウム粒子が吸着された構造であることが確認できた。この無機化DNAは、直径100 nmのDNA結合性シリカ粒子には巻きつくことができないが500 nmの粒子には巻き付ける程度の柔軟性を有していることが判明した。無機化DNAの柔軟性は、カドミウムイオンの濃度が大きい状態ではDNAの折り畳みが進みかつDNAに結合するカドミウム粒子の数が増すほど失われる。金によって就職されたDNAも硫化カドミウムのときと同様の傾向であった。DNAがドーナツ状に巻き取られた構造体も金属化または無機化できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
到達目標とした、「DNA凝縮剤との相互作用で、DNA単独で見られるのと同様の”all-or-none”タイプの折り畳みと、それに伴うリング状の折り畳み構造体の形成を無機化DNAで実現する。」に対して、実績で説明した結果は、(1)硫化カドミウムにより無機化したDNAの「”all-or-none”タイプの折り畳み」を達成できた、(2)硫化カドミウムにより無機化したDNAおよび金で金属化したDNAから「リング状の折り畳み構造体の形成を無機化DNAで実現する。」を達成(○判定)できた。その過程で金属化または無機化したDNAも未処理のDNA同様柔軟であることも見出した(○判定)。さらに、DNA上の金属または半導体の微粒子のサイズや、無機化DNAのサイズを知ることができたことは、平成26年度以降に着手する計画を一部先行して達成したことになる(◎判定)。しかし、特に無機化DNAの調製で硫化カドミウム以外の材料についての検討を行うことができなかったことは、進度の遅れ(▲判定)と判定できる。 以上、○2個、◎1個、▲1個という結果から、現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」という評定にした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、25年度実績で◎判定のテーマ「DNA上の金属または半導体の微粒子のサイズや、無機化DNAの形状を知る」を電子顕微鏡観察によって推進していく。この結果を基に無機化DNAから構成される粒子のサイズと形状に影響を及ぼす①無機材料の種類、②DNAと無機材料の量比、③無機化の反応条件を調べる。一方、▲判定であった種々の無機塩で無機化されたDNAの調製は、既に金属化が成功した金属の硫化物に限定して推進する。またその応用として、表面をDNA親和性物質で処理したガラスまたは合成樹脂基板上に無機化DNAを吸着させフィルム状に加工する方法を調べる。 最終年度の平成27年度には、無機化されたDNAからなる粒子またはDNAの表面に析出する金属または半導体ナノ粒子のサイズと形状に関する知見に基づいて、これらの粒子の物理学的・化学的性質を調べる。特に金ナノ粒子の触媒活性に関して、粒子サイズが及ぼす効果を調べる。一方、従前の研究で明らかにしてきたDNA凝縮剤およびDNA柔軟化剤が金属化または無機化されたDNAの構造変化に適用可能かを調べる。
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Research Products
(7 results)