2013 Fiscal Year Research-status Report
異常原子価3d遷移金属を発光中心とする広帯域光増幅器用結晶化ガラス材料の開発
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25620184
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田部 勢津久 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (20222119)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ガラス / 光通信 / 遷移金属 / 異常原子価 / 光ファイバ / 結晶化ガラス |
Research Abstract |
超広帯域波長多重光ファイバ通信実現のため,近赤外波長域に広帯域発光を示す光増幅器用3d遷移金属イオン含有透明結晶化ガラスの開発を目指した.そのため,通常安定な3価や6価でなく,クロム(IV)イオンを安定化できる酸化物結晶の作製と評価,同結晶を析出できる結晶化ガラス組成の探索と結晶析出のための熱処理条件の最適化,析出結晶の粒径,ガラスマトリックスとの屈折率差と光透過率の関係解明,結晶中およびマトリックス中に存在するクロムイオンの価数状態と光物性の調査を行った. まず,Cr4+イオンを安定に固溶し得る結晶化ガラスの組成探索と母ガラス作製,熱処理前後の基礎光物性評価を行った.Zn2SiO4, Mg2SiO4, Li2ZnSiO4結晶はそれぞれZnO4やSiO4の四面体サイトを有するために,クロムはd2電子配置=4価の状態で安定に固溶する. ターゲット結晶の構成成分を含み,かつ適度な熱的安定性が期待されるケイ酸塩組成のガラスを溶融法で作製した.得られたガラスは何種類かの温度で熱処理し,析出結晶とその粒径をXRD等により確認した.各試料はダイアモンドカッターで切削加工研磨,光物性測定に供した.作製した試料の発光スペクトル,蛍光寿命,量子収率を評価した. X線回折により,目的組成のナノ結晶が析出していることを確認した.いずれの試料も熱処理結晶化後はCr4+に基づく1.1~1.5μmの波長領域に広帯域発光を示した.Mg2SiO4試料のみ,Cr3+イオンに基づく,0.9μm付近の発光を示した.他の2試料に比べ,Li2ZnSiO4析出結晶化ガラス試料は長い蛍光寿命と高い量子効率を示した.Tanabe-Suganoダイアグラムより検討した結果,同試料は結晶場強度が強く,1E準位から3A基底状態へのスピン禁制遷移が支配的であったのに対し,Zn2SiO4結晶析出試料は,結晶場強度が弱く,長波長発光を示すが,3重項間のスピン許容遷移が優勢になるため,蛍光寿命が短かったと考察された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Cr4+イオン状態を安定に固溶できるケイ酸塩ナノ結晶を析出させた,3種類の結晶化ガラス試料の作製に成功した.いずれも母ガラスはCr3+イオンを含んでいたが,熱処理,結晶析出後に4価が安定に固溶され,着色が変化した.結晶化後にはCr4+イオン特有の波長1μm以上の長波長発光が観測され,光ファイバ通信波長域に広帯域な発光を得ることができた.中でもLi2ZnSiO4結晶析出試料は長い蛍光寿命と高い量子効率を確認できた.
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Strategy for Future Research Activity |
長い蛍光寿命と高い量子効率を確認できたLi2ZnSiO4結晶析出結晶化ガラス試料について,蛍光スペクトル特性や蛍光寿命の評価を進めつつ,母ガラス組成,熱処理条件の最適化,添加Cr濃度の最適化,光増幅実験を行う.
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