2013 Fiscal Year Research-status Report
ポリマー系素材の先端力学機能発現・劣化機構に関する分光・熱力学的アプローチ
Project/Area Number |
25630009
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北條 正樹 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70252492)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西川 雅章 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60512085)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 高分子材料 / 蛍光分光法 / 力学機能 / 形状記憶 / 分子シミュレーション |
Research Abstract |
ポリマー素材の先端力学機能発現メカニズムは階層的で複雑であり,特に,力学環境における機能劣化は,高分子材料の内部構造変化に起因すると考えられている.例えば,疲労負荷下における損傷累積や温度に依存して発現する形状記憶性等の機能の劣化などが挙げられる.このようなポリマー素材の力学機能の劣化について微視的に評価する手法を確立することを目的として,研究を遂行した. 機能性ポリマー素材として形状記憶樹脂の力学機能劣化について評価を行うため,形状記憶樹脂フィルムに熱力学的サイクル負荷を与えた供試材を用いて,共焦点レーザー顕微鏡を用いた蛍光浸透分光分析を実施した.具体的には,熱力学的サイクルを付与した供試材を蛍光剤溶液中に浸漬させることで,深さ方向の蛍光強度を測定した.さらに,拡散に関するフィックの法則を参照し,分光分析結果について理論的考察を与えた.その結果,ポリマー素材が熱力学的環境下で劣化した場合に,蛍光剤の浸透度が変化していることが明らかとなった.アニーリング条件が異なる場合でも同様の傾向が見られた.これらの結果は,力学機能劣化の指標として蛍光浸透分光分析の結果を活用できる可能性を示唆している.一方で,このような形状記憶樹脂の力学機能特性は,ガラス転移近傍の粘弾性特性に依存することが知られており,これらの力学機能発現のメカニズムを材料内部の分子力学的構造特性と関係づけて評価することを目的に,動的粘弾性法に基づく分子シミュレーション手法を構築した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共焦点レーザ顕微鏡を用いた蛍光分光法について,熱力学的負荷を付与した形状記憶樹脂内部の蛍光浸透のしやすさを蛍光強度の深さ方向分布から評価する方法について構築した.具体的には,フィックの拡散法則に基づいた考察を行うことで,蛍光強度分布に対する理論的裏付けを与えることが可能となった.これにより,ポリマー素材の力学機能劣化を評価する指針を得た.一方で,計算力学的観点からポリマー素材の力学機能を評価する指針を得るため,動的粘弾性法に基づく分子シミュレーション手法を新たに提案し,材料内部のハードセグメントとソフトセグメントから成る分子力学的構造特性と力学機能の関係を評価するための基礎を構築した.
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Strategy for Future Research Activity |
ポリマー素材自体が先端材料として活用される際,実際には繊維等の強化材と複合した複合材料の形態で用いられることが多い.そこで,現在までに実施してきた蛍光浸透分光法を繊維強化ポリマーの力学機能劣化の評価に応用するための検討を進めている.具体的には,繊維強化ポリマーが疲労負荷を受けた場合における材料中の樹脂部の劣化について,蛍光浸透分光分析により評価可能であるかを実験的に検証する.さらに,有限要素解析による力学解析を利用することで評価方法の妥当性について検討を進める予定である.
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Research Products
(4 results)