2013 Fiscal Year Research-status Report
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25630020
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
國枝 正典 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90178012)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 放電加工 / 電解加工 / 透明体電極 / 可視化 / 加工現象 |
Research Abstract |
透明で導電性のあるSiC単結晶半導体を電極として用いて、放電加工の加工間隙の直接観察を行った。先ず、SiCウェハと銅電極との平行平板間に生じる連続放電について、放電により発生する気泡が占める領域を調べ、加工開始後わずか数百回のパルス放電後、放電面の70%以上が気泡で満たされることが分かった。従って、放電が生じる位置は、時間経過とともに気泡中や気泡と加工液との境界で発生する確率が増加する。特に、気泡境界の長さと放電痕径の積で気泡境界の面積を定義し、単位面積当たりの放電確率を求めると、気泡境界での発生の確率が最も高いことが分かった。これは、放電によって生じた加工屑が気泡の境界に分布するからである。よって、次のパルスで生じる放電は、前の放電で生じた気泡の境界で生じる確率が最も高いことが明らかとなった。 また単発放電現象を観察し、プラズマ直径を時間の関数として表示することができた。そして、プラズマ直径と熱入力直径が等しいと仮定して、熱入力直径内で熱流束が一定であると仮定して銅電極内の熱伝導解析を行った結果、表面温度が融点を超えず、放電痕すら生じない計算結果となった。そこで、逆問題解法により溶融領域が放電痕直径と等しくなる場合の熱入力直径を求めた。その結果、プラズマの中で熱流束は一定でなく、熱流束が一様と仮定した熱入力直径はプラズマ直径の1/3程度であることが分かった。それでも、熱入力直径は加工間隙長や放電痕径の2倍以上大きいことが分かった。 さらに、電解加工の加工間隙を観察し、電解液の噴流がないときは加工開始後10msの間に加工間隙が水素ガスで埋め尽くされ、加工が困難になることが分かった。そこで、電解液を噴流し、かつ電解電流をパルス化できる装置の製作を行ない、電解液の噴流や電解電流のパルス化が加工間隙現象に与える影響を観察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
気泡や加工液が加工間隙を占める割合、放電が気泡中、加工液中ならびに気泡境界で生じる確率を求めることができた。また、連続して生じる放電の発生位置の相関についても新たな発見があった。従って、連続放電現象については当初の目標をほぼ達成できた。しかし、加工屑の排出のされ方については、詳細な観察ができなかった。また、放電電圧や電流波形と、放電発生位置との相関も、これから詳しく研究する必要がある。 単発放電については、プラズマ直径と熱入力直径との関係を求めたことが放電加工の研究分野での大きな成果である。平成26年度は、この熱入力半径を用いて、除去メカニズムの解明を進める必要がある。 また、電解加工の加工間隙を観察するための装置を製作し、気泡の発生や排出の現象を観察することができたが、加工速度や加工精度との関連を調べるには至らなかった。また、電解加工中の放電は防止しなければならない現象である。放電発生の原因解明を目標としたが、使用した定電圧電源の容量不足で、放電を発生させることが困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
実際の放電加工時に、放電加工条件の適応制御を行うには、放電電流や放電電圧波形から放電状態の良否を識別することになる。従って、電流・電圧波形と放電現象との相関を研究する必要がある。除去に有効な放電が生じたときの波形と、そうではない波形とが分類できれば、実加工に有効な制御手段が見いだせる。 単発放電現象を、高速度ビデオカメラのフレームレートを上げ、レンズの拡大率を上げて観察し、放電加工における除去のメカニズムの解明を行う。特に、油加工液と水加工液との加工特性の違いをもたらす原因が解明されていないので、平成26年度はこの違いの解明を目標とする。 また、ワイヤ放電加工の加工間隙の可視化はまだ行われていない。その構想は平成25年度に立ててあり、放電加工機メーカなどからの期待も大きいので平成26年度に本格的に実験を行う。 電解加工については、加工液の噴流や加工電流のパルス化、さらには工具電極の回転や、加工間隙の周期的な変動が加工現象に及ぼす影響を可視化する。また、放電の発生のメカニズムを解明し、放電の発生を防止する方法を考案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は現有の放電加工機を用いて実験が行えたので、放電加工については新たな装置や回路の製作の必要がなく、使用額が少なかった。また、放電加工機は保有しているが電解加工機は保有していない。従って、電解加工の可視化を行うには、電解電流をパルス状に供給するためのパルス電源が必要である。そこで、現有の35V10Aの定電圧定電流電源を用い、FETによるスイッチング回路を自作してパルス電源回路を製作した。しかし、実際の電解加工ではより大電流を用いて加工している。また、電解加工中の放電現象の観察を試みたが、35Vでは放電の確率が低く、放電現象の観察が困難であることが分かった。そこで、平成26年度の予算と合わせて容量の十分に大きな電源を購入することにした。 70V30Aの定電圧定電流電源(\777,000)を購入し、実際の電解加工に使用される加工電流での観察を行う。また、加工電圧を上げることにより、放電を生じやすくして、電解加工における放電現象を観察する。さらに、加工間隙をより拡大して観察するために、拡大レンズなどの光学系に研究費を多く使用する。
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