2013 Fiscal Year Research-status Report
イオン液体の潤滑作用への超熱原子状酸素照射による影響のin-situ測定
Project/Area Number |
25630036
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
藤井 正浩 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (80209014)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木之下 博 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (50362760)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | イオン液体 / トライボロジー / 低地球軌道 / 超熱原子状酸素 |
Research Abstract |
イオン液体は,熱安定性,超低蒸気圧,適度な粘度,また優れた摩擦特性から,次世代の宇宙環境用潤滑液体として期待されている.しかしながら,GPS衛星や宇宙ステーションが飛行する高度200kmから700kmの低地球軌道(low Earth orbit;LEO)における主な残留大気成分である原子状酸素に対する耐性が全く明らかになっていない.そこで本研究では,地上で低地球軌道の原子状酸素環境(単位時間当たり照射量:10e15 atoms/cm2 以上,原子状酸素平均並進エネルギー:5eV)を模擬できる超熱原子状酸素ビーム装置を用い,原子状酸素照射化のin-situで摩擦実験を行い,摩擦特性の変化と,イオン液体の劣化の関係を明らかにし,劣化反応の抑制法について開発を試みる. 本年度は,実験の整備,予備的な実験,および耐摩耗性とイオン液体のアニオンによる鉄腐食を防ぐための酸化グラフェンの添加に関する研究を行った. 主たる実験装置である超熱原子状酸素ビーム装置とその真空チャンバー内で動作する真空摩擦試験機の整備を終えている.また予備実験として,原子状酸素照射しないでイオン液体を滴下して,基板としてSUS304,ボールとしてSUJ2を用いて,面圧約3.0GPaの高面圧で実験を行った.用いたイオン液体は一般的に市販されている,[EMIM+][BF4-],[BMIM+][BF4-],[MOIM+][BF4-]を用いた.摩擦実験の結果,摩擦係数に関してあまり変化が無かったが,10万回の摩擦後に摩擦痕を観察すると,炭化水素基の比較的長い,[BMIM+][BF4-],[MOIM+][BF4-]で摩擦痕周辺に変色が見られた.これはイオン液体のアニオンによるトライボケミカル反応で基板のSUS304が化学的な劣化を受けたためと思われる.しかし,この化学的な劣化は酸化グラフェンを分散することで解消された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超熱原子状酸素ビーム装置ならびにその真空チャンバーで動作する摩擦試験機の整備は終わり実験できる状態である.ただ,イオン液体が蒸発する成分を特定する質量分析器による測定が,原子状酸素ビームを照射した時の真空度が極度に落ちるため,現状では同一のチャンバー内で使用できない.摩擦試験機を動作させるだけであれば問題ない.それゆえ,原子状酸素ビームを照射してある程度イオン液体を劣化しておき,そこで摩擦試験機を動作させて,質量分析器の測定を行うことにする.
|
Strategy for Future Research Activity |
イオン液体はカチオンの炭化水素基が長い場合,摩擦するだけでトライボケミカル反応により摩擦痕周辺が化学的な劣化を受ける.おそらく摩擦痕内部も同様な反応で劣化が生じ,摩耗が増大していると思われる.これを防ぐために前年度に酸化グラフェンをイオン液体に分散させて,このトライボケミカル反応を抑えることに成功した.本年度は,原子状酸素を照射しながら摩擦実験を行い,イオン液体のカチオンの炭化水素基長さによる差異,アニオンの種類による差異,原子状酸素照射量による差異,そして酸化グラフェンを加えた時の差異について研究を行う.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度,真空中で使用する摩擦試験機の整備に時間がかかり、摩擦試験の回数が多くなかった.それゆえイオン液体の購入量が多くなく,全体として費用差が生じた. 前年度購入しなかったイオン液体を今年度購入する.
|