2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25630039
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
松田 健次 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40229480)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 反発硬さ試験 / 破壊靭性 / ビッカース硬さ / き裂 / 接触問題 |
Research Abstract |
試料と試料台の間に,2種類の厚さ(0.5mm,1mm)のシリコーンゴムを挟んだ場合,および1個または3個のワッシャーを配置を変えて挟むことにより,試験片の固定状態を意図的に変化させ,その際のハンマの反発挙動と試験片の挙動を,既存および新たに購入したレーザードップラー振動計の2台を用いて同時計測することによって,反発硬さがばらつくメカニズムについて検討した. その結果,試料を試料台に直接載せて固定した場合においても,ハンマ衝突によって試験片は数μm程度下方に変位するが,シリコーンゴムやワッシャーを挟むことによって変位は増加し反発係数は低下する傾向が認められること,ただし,反発係数の低下の程度は試験片の変位と必ずしも相関がないこと,好ましくない固定条件の場合,衝突によって生じた試験片の変位が十分に回復する前に試験片からハンマが離れてしまい,これによって試験片に残留する振動エネルギーが増加することが,反発係数を低下させる一因であることを確認した. なお,ビッカース硬さ試験の場合は,圧子の押込み深さδが試料厚さhの10分の1以下であれば,下地の影響を受けず試料そのものの硬さが得られるが,今回の反発硬さ試験では,δ/hが0.01程度であっても,1mm厚のシリコーンゴムを敷いた場合には無視できないほどの影響の生じることが明らかとなった.しかし,厚さを0.5mmにするとその影響の程度は著しく低下し,試料台に接する試験片背面の粗さや平面度に起因する接触状態の変化を模擬したワッシャーの配置の影響に比べると格段に安定していることから,ゴム等の弾性率の小さい薄いシートを試料の下に挟むことが,信頼性の高いデータを取得するための実用的な固定方法になりうることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の第一の目的であった,試料固定方法がハンマ反発挙動に影響を及ぼすメカニズムの解明,および信頼性の高い測定値を得るための実用的な試料固定方法については,研究実績の概要に記載したように,ほぼ目標を達成できたと考えている.なお,当初の案では,レーザードップラー振動計のレーザを試験片表面に照射してその挙動を把握する予定であったが,その照射位置をハンマ衝突位置に近づけることが容易でないことが判明した.そこで,試験片を載せる基台に空けた貫通穴にレーザを通過させ,プリズムで90度反射させて試験片背面の中心に照射することで,問題の解決を図った. また,試料厚さおよび試験条件の影響の解明に対しては,圧子の押込み深さδと試料厚さhの割合で統一的に整理できるというビッカース硬さ試験の結果をそのまま反発硬さ試験に適用することは,たとえ用いる圧子形状が同じであっても困難であり,下地の選択には十分な検討が必要であることを明らかにできた. 硬さと反発係数の関係の解明に関しては,実験と解析結果を併用して実施する必要があるが,現在のところ,実験におけるハンマと試験片の挙動を解析によって必ずしも正確に再現できていない.特に,試験片挙動の再現に問題があるが,その原因についておおよそ見当はついている.2年目には目標を達成できるものと考えている. なお,当初の予定にはなかったが,測定値がばらつく原因として,測定試料表面に潤滑油が存在する場合について検討を行ったところ,球圧子ハンマは油種や衝突速度に大きな影響を受けるのに対し,ビッカース圧子ハンマはそれらの影響をほとんど受けないことが明らかになった.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の主目的である,反発試験による破壊靭性評価法を実現するために,まず,ガラスを用いて,き裂の発生挙動を把握する.ビッカース圧子を静的に押し込んだ場合には,圧痕き裂は除荷過程で発生することが知られているが,まず,用いるガラス試験片のビッカース硬さ試験を実施し,静的試験の場合の挙動を把握する.次いで,反発硬さ試験における1万分の1秒程度のオーダと予想される衝突時間内でのき裂発生時期を同定するために,(1)金蒸着によって配線を描き,き裂発生に伴う断線を電圧変化によって捉える,(2)10万コマ/秒程度の高速ビデオカメラで観察する,(3)レーザドップラー振動計を用いてき裂形成によるレーザ光路の遮断または反射を速度変化として捉える,(4)レーザドップラー振動計を用いて,き裂発生による表面弾性波の変化を捉える,等を試みる.その結果とハンマの速度波形を比較することにより,き裂発生時期およびき裂サイズがハンマ挙動に及ぼす影響を明らかにする. さらに,ハンマ衝突エネルギーおよび衝突速度を変化させた実験を行い,これによって形成されたき裂に既存の圧子圧入法を適用して算出される破壊靭性値を,従来の準静的押込み試験から得られる同試料の値と比較することにより,同手法によって算出される破壊靭性値に及ぼす衝突エネルギーおよび衝突速度の影響を明らかにする.さらに,これらの値および他の手法によって得られた破壊靭性値と反発係数を比較するとともに,き裂発生挙動とハンマ挙動の関係を解析することにより,「破壊エネルギー」と「破壊靭性」との関係を明らかにし,反発試験を用いた新しい破壊靭性評価法を提案する. なお,初年度から開発を続けている解析手法を完成させ,上記解析に活用する.
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Research Products
(1 results)