2015 Fiscal Year Annual Research Report
量子・分子論に基づいたナノ流動構造制御による高耐劣化性高分子電解質膜の理論設計
Project/Area Number |
25630044
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
徳増 崇 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (10312662)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 分子流体工学 / 燃料電池 / 高分子膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, 高分子電解質膜を構成するPerfluorosulfonic Acid(PFSA分子の基本要素について量子化学計算を行い, 原子の電荷および最安定構造の情報を得た. 次にこの情報を元にNafionの分子モデルを構築した. Nafion分子は無極性部7個に対し極性部を1つ繰り返す組み合わせ(EW値で1147に相当)を15回繰り返して1つの分子とした. この分子を計算系に複数25本配置し, さらにその中に水分子とオキソニウムイオンを混入して, 高分子電解質膜内部における水の構造を解析するシミュレータを構築した. オキソニウムイオンの数は系の電気的中性を保つために常に325個とし, 水分子の数は含水率により変化させた. オキソニウムイオンとOHラジカルの移動にはVehicle機構だけでなくGrotthus機構をも考慮し, その機構はEVB法を用いて取り扱った. また, そのポテンシャルは密度汎関数理論(DFT)の計算結果を再現できるように調整した. このシミュレータを用いて, まず水のクラスター構造を動径分布関数を用いて評価した. その結果, 本研究で用いたモデルはGebelの予想した水クラスター構造の周期サイズをよく表せており, モデルの妥当性が検証された. シミュレータを用いて, 平均二乗変位を求めることにより水, プロトンおよびOHラジカルの拡散係数を評価し, その含水率依存性を解析した. その結果, 水およびプロトンの拡散係数の含水率依存性は実験結果と概ね一致し, 含水率が増加するにつれて拡散係数が上昇することが確認された. しかしながら, OHラジカルの拡散係数の急激な上昇は観測されなかった. これはプロトンの移動に伴うエネルギー障壁に比べて, OHラジカルの移動に伴うエネルギー障壁が極めて大きいためと考えられる.
|
Research Products
(8 results)