2014 Fiscal Year Annual Research Report
個別化医療実現のための細胞内RNA・タンパク質の高品位高速乾燥固定法の開発
Project/Area Number |
25630062
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白樫 了 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (80292754)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 生体保存 / 高速乾燥 / ガラス化 / 臨床検体 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請研究では,体外に摘出した検体中の細胞に由来する劣化しやすい生体分子を瞬時に固定して,長期保存後も検査に耐えうる品質をもつ検体試料を作る技術を開発することを目的としている. 初年度は,細胞膜を不可逆的エレクトロポレーションを用いて瞬時に破砕することで,細胞内に存在する核酸やタンパク質を,電極に予め被覆した外部の耐乾燥保護物質と接触させることを試み,適切な電界強度で細胞膜の破砕が可能であること,被覆の有無によらず破砕に必要な電圧が変化しないことを確認した.また,エレクトロポレーションによりDNAの断片化がおきていないことを,DNAを蛍光染色することで確認した. 最終年度は,耐乾燥保護物質であるデキストランとトレハロースを種々の質量比で混合した溶質濃度30-40wt%の水溶液中に蛍光プローブをトレーサーとして極微量混入して,これを一方向乾燥をさせることで,乾燥に伴う水溶液内の蛍光物質の濃度分布を測定した.その結果,トレハロースのみの場合は,乾燥界面近傍が極高濃度である指数関数上の濃度分布が形成されたが,デキストランの場合は,乾燥界面は急峻な濃度分布があり,水溶液内にかけては直線状の濃度分布となった.この界面近傍に限定された場所に高濃度領域が存在する現象は,試料の乾燥速度によっては,乾燥界面の近傍のみがガラス化して内部が液体のままで維持される可能性があることを示唆している.この示唆に基づき,耐乾燥保護物質水溶液をガラス化する領域程度の薄液膜にして高速真空乾燥を試みたところ,試料濃度と液膜厚さを適切に選定すれば,試料全体がガラス化することがわかった.この結果は,液性検体である血液の特に血漿を手軽に常温で急速にガラス化できることを意味しており,当初の目的である急速常温乾燥技術の手がかりを得たと考えられる.
|
Research Products
(4 results)