2013 Fiscal Year Research-status Report
新発想による冷却媒体の研究開発:非溶解性混合媒体の核沸騰熱伝達特性の解明
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25630067
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大田 治彦 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50150503)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 熱工学 / 沸騰 / 高性能冷却 / 新熱媒体 / 半導体冷却 |
Research Abstract |
広範な冷却対象・冷却条件に対応できる媒体として、新たに非溶解性混合媒体の核沸騰に着目した。限界熱流束の飛躍的増大のみならず、負荷変動の大きな冷却系で嫌われる沸騰開始時の伝熱面温度のヒステリシスの回避、非凝縮気体(空気)混入防止のための正圧(大気圧以下)作動下での冷却面温度の低減などを、液体混合のみで実現できるという点で画期的方法である。 初年度は非溶解性混合媒体の熱伝達特性の詳細解明を行った。水平平板伝熱面に対して、高密度低沸点媒体と低密度高沸点媒体の組み合わせが最適であるとの判断に基づき、プール沸騰で4つの目標を設定した。結果は以下のとおりである。 ①低熱流束バーンアウトの発生の有無:加熱前の高密度低沸点媒体の層高さが一定の範囲にあるときのみに生じ、厚いと低サブクール度高密度低沸点媒体の沸騰と同等となり、極度に薄いと低熱流束から低密度高沸点媒体が伝熱面に接触するため、高サブクール度低密度高沸点媒体の核沸騰が高密度低沸点媒体の優先的蒸発によって促進された伝熱特性を示した。 ②限界熱流束の増加割合:低密度高沸点媒体は高密度低沸点媒体の高い蒸気圧により高サブクール度が自律的に付与されるので、きわめて大きな限界熱流束が予測される。これを実測するために伝熱部の設計を大きく変更した。 ③沸騰開始時の伝熱面過熱度のオ-バーシュートの大小:沸騰開始前に伝熱面上に層状に堆積する高密度低沸点媒体により沸騰開始を行うので、低密度高沸点媒体が水の場合には、沸騰開始がきわめて容易であることがわかった。 ④高熱流束時の低密度高沸点媒体ベースの伝熱特性と伝熱面温度のレベル:低密度高沸点媒体単成分の沸騰特性に比して、低密度高沸点媒体の核沸騰が高密度低沸点媒体の優先的蒸発によって促進され、伝熱面温度は明らかに低減することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4つの設定目標に対する達成度は以下のとおりである。①低熱流束バーンアウトの発生の有無:達成、②限界熱流束の増加割合:達成度50%(伝熱部の設計は完了したが、外注による伝熱部の製作箇所に加工上の不具合を生じたため、再製作を依頼中)③沸騰開始時の伝熱面過熱度のオ-バーシュートの大小:達成、④高熱流束時の低密度高沸点媒体ベースの伝熱特性と伝熱面温度のレベル:達成 計画調書に記した達成目標については以下のとおりである。①”中熱流束バーンアウト”が生じる条件が明確になっていること:達成、②低圧力の実験により、沸騰特性として現れる混合状態への影響が明確になっていること:未達成(飛躍的に高い限界熱流束の実測を行うため、伝熱部の変更を優先し、実験を途中で中断したことによる)第二年度の前半に実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
第二年度はプール沸騰と強制流動沸騰を対象として、以下のように行う。 プール沸騰 <初年度未達成項目の実施>新規製作伝熱面による限界熱流束の増加割合の実測、低圧力下での高密度低沸点成分および低密度高沸点成分の量比と沸騰特性の関係、<課題>最適な液体の組み合わせの特定、<明確にする内容>①異なる液体の組み合わせに対する伝熱特性の差異を整理する、②最適な加熱前液層厚さ(量比)に関して、熱流束を増加した場合の混合の程度に関してモデリングを行う、③最適な加熱前液層厚さ(量比)と伝熱特性の関係を明確にする、<達成目標>低熱流束において低沸点媒体ベースの伝熱特性となる場合と高沸点媒体ベースの熱伝達特性となる場合の区別について、加熱前液層厚さ(量比)と系圧力の関係が物性値を用いて表現されていること 強制流動沸騰 <課題>管内強制流動沸騰への適用、<明確にする内容>低沸点液体と高沸点液体を分散させるためのループ構造の考案、媒体相互の自己圧縮による高サブクール度効果による除熱限界(バーンアウト熱流束)の増大割合を明確にする、<達成目標>ループ構成および伝熱部構造が確立されていること、平行平板間加熱狭隘流路内の強制流動沸騰に適用するために、両液体の分散方法が確立されており、さらに強制流動沸騰熱伝達への適用効果に対する知見が得られていること、<実験装置・方法>低沸点媒体および高沸点媒体を一定流量比で循環できる二相ループを新規製作 以上は①プール沸騰実験では非溶解性混合液体の沸騰に関す伝熱特性の基本を明らかにするとともに、密閉式冷却システムへの適用に対する知見を得る、②管内強制流動沸騰への適用は、平行平板間加熱狭隘流路内の強制流動冷却システムへの適用に対する前段階として、限界熱流束の増大効果を調べ、強制流動系に対しても非溶解性混合液体の沸騰が有用であることを具体的に示す、ことを目的としている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度の目標の一つは限界熱流束の増加割合の実測であったが、本提案による非溶解性混合媒体では、液体の組み合わせにより、一方の成分液体が他方媒体の蒸気圧により高サブクール状態に自律的に保持できるため、簡単な方法ながら限界熱流束値はきわめて高い値となる。既存の整理式である程度の予測は可能であるが、これを実測するためには伝熱部仕様新規に設計・製作する必要があった。すでに加工を依頼していたが、加熱ブロックの形態ゆえに熱電対取り付けがうまくゆかず、方法を検討して再度作りなおすことになった。このため第二年度に実施することになり、組み付け等に要する費用を繰り越すことになった。また低圧力での実験実施も伝熱部の交換を優先したため、実験が中断しており、このため液体購入費用等を次年度に繰り越すことになった。これらの総額は初年度交付申請書記載の直接経費1,400,000円のうちの636,810円である。 上記理由を踏まえ、平成26年度は以下の予算使用計画で進める予定である。繰越額(636,810円)はすべて物品費として26年度配分予算と合わせて(計1,326,810円)、主に加熱ブロックの製作および改修費用として使用し、他、配管材料、試験液体等の消耗品として使用する。国内外の学会発表のための旅費(660,000円)を、国内旅費として 160,000円、外国旅費として 500,000円を使用する。人件費・謝金として計上するものは無い(0円)。その他、会議参加登録費用等として 150,000円を使用する予定である。
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