2013 Fiscal Year Research-status Report
金属化マイクロタービンの超高効率な光駆動メカニズムの解明と応用
Project/Area Number |
25630089
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
丸尾 昭二 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (00314047)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 光ピンセット / マイクロ光造形 / マイクロマシン / ラボオンチップ |
Research Abstract |
本研究では、超微弱レーザー光による金属化マイクロタービンの超高効率な駆動現象のメカニズムを実験と解析によって解明することを目指しています。我々は、この超高効率な光駆動の原因として、金属化マイクロタービンに照射されたレーザー光が、金属薄膜に吸収され、その光吸収によって生じる発熱が熱対流を誘起し、マイクロタービンの回転を促進していると予想しています。そこで本年度は、タービンの回転時の光吸収による発熱現象を実際に観察するために、蛍光色素の発光強度の温度依存性を利用して、レーザー照射時の発熱現象の観察を試みました。まず、我々の実験に適した蛍光色素として、ローダミンBを選定し、蛍光強度の温度依存性を実際に計測し、温度と蛍光強度の線形性を確認しました。さらに、実際にマイクロタービンにレーザー光を照射した際に生じる蛍光を観察するために共焦点蛍光顕微鏡システムを構築しました。現在は、蛍光強度と駆動用のHe-Neレーザーの光強度の調整を行っている段階です。今後、この駆動・観察システムのパラメータを最適化して、実際にマイクロタービンが回転するときの温度分布をリアルタイム計測する予定です。 一方、より高効率なマイクロタービンとして、レーザー光を照射するだけで自律的に回転する新型マイクロタービンの設計を行い、実際に2光子マイクロ光造形法によってタービンを試作し、無電解銅めっきを施して、新型の金属化マイクロタービンを試作しました。このタービンは、従来のタービンと異なり、シャフトとローターが一体化した構造をしており、回転時のぶれが少なく、より高精度かつ高効率に回転することが期待できます。今後、この新型マイクロタービンの駆動実験を行う予定です。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、マイクロタービンにHe-Neレーザーを照射した際に生じる発熱を観察する手法として、蛍光強度の温度依存性を利用した計測法を採用し、基礎実験を行いました。最初の方法では、蛍光強度から温度をより高精度に測定するためには、蛍光強度が温度に依存する色素と温度に依存しない色素の2種類を用いて、それらの蛍光強度の比から温度上昇を推定する予定でした。しかしながら、温度依存性のない蛍光色素の発光強度が予想以上に微弱であり、当研究室で所有している高感度CCDカメラでは計測不能であることがわかりました。そこで、まずは温度依存性のある色素のみを用いて蛍光強度を測定する実験系に変更しました。そして、実際に共焦点蛍光顕微鏡システムを構築し、実際にHe-Neレーザーをマイクロタービンに照射して、蛍光観察を行いました。その結果、He-Neレーザーの反射光が予想以上に強く、蛍光強度の数倍のレーザー光が戻り光として観察系に入ってしまうことがわかりました。このため、He-Neレーザー光を十分にカットするためのノッチフィルタおよび、蛍光をより高効率に検出できるバンドバスフィルタを再度選定し、蛍光観察系を再構築している段階です。よって、以上の予備的実験に当初計画より時間を費やしたため、若干の遅れが生じています。しかしながら、最適なフィルターが選定できれば、すぐに蛍光観察を実施できる状況にあることから、次年度において十分に計画を実行できると考えています。 一方、より高効率なマイクロタービンの設計・試作は順調に進んでおり、次年度に駆動検証実験を行う予定です。そして、完成させた蛍光観察システムを用いて、駆動時の発熱現象を観察する予定です。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、蛍光強度が温度依存性を示す色素を用いて、マイクロタービンにHe-Neレーザーを照射した際に生じる発熱を観察することを目指します。まずは、基板に固定されて回転しない状態のマイクロタービンのブレードに、レーザー光を固定して照射した際に生じる、温度上昇を評価します。次に、実際に回転可能なマイクロタービンに、レーザー光を集光し、タービンを回転駆動させているときに生じる発熱を観察します。そして、その発熱からタービン周辺の熱対流の様子を可視化します。 一方、マルチフィジックス解析ソフトを用いて、レーザー照射による発熱と、その発熱による対流の生成について解析を行います。そして、発熱現象の観察結果と解析結果を比較し、実験および解析の妥当性を評価します。これらによって、金属化マイクロタービンの高効率な駆動メカニズムの解明を目指します。 また、より高効率な新型マイクロタービンの開発に関しては、昨年度設計・試作したシャフト一体型のマイクロタービンを実際に駆動する実験を行います。そして、従来のマイクロタービンの駆動効率と比較し、有効性を実証します。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
金属化マイクロタービンの発熱現象の観察のために構築中の共焦点蛍光顕微鏡システムを完成させるために、蛍光観察の予備的実験を行っている段階において、現在使用しているフィルターでは、駆動用のHe-Neレーザーが十分にカットできないこと、および蛍光をより高効率に観察するバンドバスフィルターを再度選定する必要があることなどが判明しました。このことが判明したのが年度末であったため、最適なフィルターを選定、発注するために十分な時間がなく、最適なフィルターを選定後、次年度の早い段階で購入する計画に変更しました。 選定したバンドパスフィルターおよびHe-Neカットフィルターを早期に発注し、金属化マイクロタービンの発熱現象観察用の共焦点蛍光顕微鏡システムを完成させる予定です。そして、実際にレーザー照射時の発熱現象を観察し、駆動メカニズムの解明を目指す予定です。
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