2013 Fiscal Year Research-status Report
マグネトプラズモニック構造体を用いた温度自己制御型グリーン素子の創成
Project/Area Number |
25630116
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
齊藤 伸 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50344700)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | プラズモン / スピン依存散乱 / 光学特性 / 誘電率スペクトル / キュリー温度 |
Research Abstract |
本研究は,「強磁性金属薄膜の誘電率が可視光から赤外光領域にわたって,キュリー温度 (Tc) 付近で変化する現象」を活用し,Au/強磁性層/Auマグネトプラズモニック構造体の局在表面プラズモン (LSPR) 共鳴のON/OFFをTcを利用して制御しようという挑戦的な試みである.所望のTcを有する強磁性金属材料を上記マグネトプラズモニック構造体に用いることにより,Tcを境としてLSPRの励起/抑制を制御することが狙いである.Tcに傾斜を付けておくことにより,簡単な温度センサとなることは元より,屋外で太陽光を利用することにより,温度自己制御型素子 (LSPR損失にて自己発熱,昇温にてTcを超えると共鳴は自己停止) への展開を目指す. 平成25年度は,「Tc近傍での強磁性金属薄膜の誘電率スペクトルの温度変化」現象について,Ni系薄膜以外の材料について検討した.測定時の加熱による薄膜の構造変化の効果を排除するため,高温側から室温側へと温度を低下させながら光学スペクトルを評価した結果,MnSb薄膜 (Tc: 320℃付近) において325-100℃の温度範囲にて,特に2 eV以下 (620 nm以上の波長範囲) で大きく変化することを見出した.振動子モデルを用いて誘電率スペクトル解析を行い,ドルーデ項をフィッティングした結果,抵抗率および伝導電子の緩和時間の値や温度依存性がTcを境に変化しており,格子振動による抵抗率変化が,温度の一次関数であることを踏まえると,スピン依存散乱による抵抗率変化は約300μΩcmと見積られた.これは,バルク試料の直流抵抗から導出された文献値である約200μΩcmと同等の値である.本手法は,非接触なプローブにより材料のTcを評価できるという点でも興味深く,ハードディスクの熱アシスト磁気記録用材料評価の観点からも注目された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
室温成膜により作製される,合金薄膜や金属間化合物薄膜を高温に加熱した場合に生じる構造緩和が光学特性変化に及ぼす影響を無視できず,スピン依存散乱の温度依存性がもたらす光学特性変化との効果の切り分けに計画以上の時間を費やした. 赤外光領域では,加熱されている材料のみならずヒータブロックからも赤外光が放射されているため,試料からの反射光のみを検出する光学系を構築する工夫が必要であった. 以上のハードルをクリアできたため,MnSb薄膜のキュリー温度付近での誘電率スペクトルの赤外光領域での温度変化特性を評価できたもの (当初目標) と考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
局在プラズモン共鳴 (LSPR) 誘導のためのAuとの積層化のための条件出しは,薄膜試料の微細加工技術に負っている.微細加工の知見を連携研究者から助言を得て条件確立を急ぐと共に,加工領域である数100μメートル領域の光学特性の温度変化を計測可能な光学系を立ち上げ,Tc付近でのLSPR条件の変化を確認する検証実験を実施したいと考えている.
|
Research Products
(3 results)