2013 Fiscal Year Research-status Report
ナノギャップでのエレクトロマイグレーションを利用した原子の移動操作制御手法の開発
Project/Area Number |
25630122
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
白樫 淳一 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00315657)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 電子・電気材料 / ナノギャップ / マイグレーション / 単電子素子 |
Research Abstract |
本研究では、通電にて誘起されたエレクトロマイグレーション現象による原子の移動・操作機構を利用したナノスケール構造制御技法を開発し、同種・異種の原子からなる原子スケールサイズの量子ドット構造体(原子スケールドット)の作製と、そこから発現される新しい物性の探索・制御と機能の集積化を目的とする。具体的には、ナノギャップ電極に高電界トンネル電流を誘起し、ナノギャップ間での原子のエレクトロマイグレーションを発生させる。この際、原子の移動における物理的・化学的素過程を「その場」制御し、原子スケールドットのサイズや位置、構成原子の種類などを精緻に調整しながらナノギャップ間へ配置することで機能の集積化を達成する。同時に、原子スケールドットから発現される諸物性をナノギャップ電極を利用して電気的にプローブすることで、新しい機能性の発揮やその制御技術(素子)の構築を目指す。 初年度(平成25年度)では、アクティベーション法を用い、Niナノギャップでの原子接合(量子ポイントコンタクト: QPC)の形成を試みた。電子線リソグラフィーにより初期ギャップ幅が数10nm程度のNiナノギャップを作製した。これらのナノギャップに対し、数100μAの電流を通電することでアクティベーション法を実行した。その結果、通電電流を線形に増加させているにもかかわらず、素子のコンダクタンスが離散的に変化し、量子化コンダクタンスの0.5倍ごとにほぼ一定となる挙動(コンダクタンス量子化)が室温において確認された。さらに、FPGA(Field Programmable Gate Array)を利用したエレクトロマイグレーションの超高速計測制御システムを開発し、マイグレーションによる素子のコンダクタンス変化を1秒以内で量子化コンダクタンス領域まで制御することに成功した。これより、本手法は、高速で精緻な原子~ナノスケール構造形成技法としての可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Niナノギャップにアクティベーション法を適用することで、室温にて、原子単位の接合である量子ポイントコンタクト(QPC)の形成と制御に成功した。さらに、FPGA(Field Programmable Gate Array)を利用し、エレクトロマイグレーションの超高速計測制御に特化したカスタムハードウェアの構築に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度(平成26年度)では、これまでに開発してきたアクティベーション法とFPGAによる超高速エレクトロマイグレーション制御技術を融合させ、原子スケールドットの高速形成と諸物性制御を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、政府の補正予算措置により、本学に整備されている電子線露光装置の更新が行われた。当該装置は本研究課題の遂行に必須の装置であるが、今回の更新措置作業により、平成25年11月から翌年3月にわたり当該装置を使用することが出来無くなり、研究計画の部分的な見直しが発生した。 平成26年度は当該装置も立ち上がり良好な性能を発揮している。これより、最終年度である平成26年度では、昨年度に生じた研究計画の修正部分を補うべく、素子作製にかかる実験プロセスの大幅な効率化に伴い必要とされる大量の各種消耗品類を購入するために当該助成金を使用する予定である。
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