2013 Fiscal Year Research-status Report
有機C-MOSインバータを実現させる疑似Nチャネル形OFETの新構造とは?
Project/Area Number |
25630131
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Nagaoka National College of Technology |
Principal Investigator |
皆川 正寛 長岡工業高等専門学校, 電子制御工学科, 准教授 (20584684)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 有機電界効果トランジスタ / 有機半導体 / 有機トランジスタ |
Research Abstract |
酸化性を有する金属酸化物層と有機半導体層を組み合わせた電荷発生型有機電界効果トランジスタ(OFET)は,電荷発生層と有機活性層界面で形成される電荷移動錯体がチャネル形成に寄与するため,ゲート電圧を印加していた状態(オフ状態)でも電流(オフ電流)が観測されることが課題となっている。そこで,本研究では電荷発生層と有機活性層界面に有機活性層よりも大きなイオン化ポテンシャルを持つ有機材料をブロック層として挿入することにより,オフ電流の低減を試みた。その結果,ブロック層を挿入した素子のオフ電流値は,電荷発生層を持たない素子と同程度まで低減できることがわかった。本研究において検証したところ,これはソース電極から注入された電荷(本研究ではホール)が,有機活性層とブロック層の界面に蓄積し,オフ状態では電荷が電荷発生層との界面まで到達しないためと考察された。 一方で,有機活性層とブロック層界面における電荷蓄積の効果を高めるためにイオン化ポテンシャルの大きい材料をブロック層に適用すると,ブロック層と電荷発生層のエネルギー準位差が小さくなるため電荷発生量が減少した。これは,電荷発生型OFETのオン電流の減少につながると予想された。そこで,本研究において簡便に作製でき,かつ強酸化性を示す新たな電荷発生層の探索を行ったところ,蒸着した銀薄膜を酸化処理する方法で作製した酸化銀薄膜が良好な電荷発生層として機能することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ブロック層の挿入によるオフ電流値の制御,および異なるイオン化ポテンシャルを持つ数種類の材料をブロック層に適用した際のオフ電流値の挙動について検証を行い,オフ電流値低減に対するブロック層挿入の有効性を確認した。また,銀薄膜を成膜後に酸化処理する方法で作製した酸化銀薄膜が良好な電荷発生層材料として電荷発生型OFETに適用できることを明らかにした。以上の結果より,おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの実験により,オフ電流の低減にはブロック層の挿入が有効であり,かつオン電流の増加には新たに見出した強酸化性の電荷発生層が有用であることが確認された。本年度は,活性層,ブロック層および電荷発生層のそれぞれの膜厚を増減させるとFET特性がどのように変化するかを明らかにする。この実験によれば,C-MOSインバータ等を作製する際に必要となる疑似Nチャネル形OFETの最適な素子構造を得ることができる。
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