2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25630133
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山崎 裕文 独立行政法人産業技術総合研究所, エネルギー技術研究部門, 研究グループ長 (90358242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 巖 独立行政法人産業技術総合研究所, 先進製造プロセス研究部門, 主任研究員 (30358238)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 高温超伝導線材 / 多芯細線化 / 交流損失 / 立方体集合組織 / 引き抜き加工 / 再結晶 |
Research Abstract |
現在までに高温超電導長尺線材が市販されるようになり、各種応用の研究開発が進められている。しかし、現在の線材は幅数ミリのテープ形状を有しているため、テープ面に垂直な方向の磁界による交流損失が大きく、変圧器や発電機の電機子巻線などの交流応用が阻まれている。また、遮蔽電流によって磁界が誘起されるため、NMR, MRI など精密な磁界精度が必要とされる機器への応用が困難である。本研究では希土類系超電導多芯細線を作製するための技術開発を行い、交流損失と遮蔽電流効果を大幅に低減させて高温超電導線材の応用可能性を飛躍的に向上させることを目的とする。 ニッケル・銅などの FCC 金属に圧延加工を施してテープ形状とし、充分な加工率を確保した上で再結晶化熱処理を行えば立方体集合組織が得られることはよく知られており、希土類系高温超電導線材の作製にも応用されている。本研究では、FCC 金属の加工・再結晶熱処理によって立方体集合組織を有する四角細線を作製し、その上にバッファ層・高温超電導層を蒸着することによって超電導線材を製作する。ニッケル角線でなかなか立方体集合組織が得られずに苦労したが、加工方法を洗練させるとともに、加工度を上げることにより、4面とも (200) 面が主要面であるニッケル平角線(幅 0.5 mm、厚さ 0.2 mm)を得ることができた。X線回折の極点図を測定して面内でも配向していることを確認して、本研究のブレークスルーとなる点を突破できた。これまで、(立方体集合組織を得やすい)Y 添加 Ni 合金の圧延・引き抜き加工と再結晶熱処理で、一部が立方体集合組織となった Ni 基合金角線を得た例はあるが[J. Eickemeyer et al., Physica C, vol. 471, p. 549, 2011.]、市販のニッケル素材を用いて立方体集合組織を有する平角線を得た今回の成果は、今後の発展に大きな希望をもたらすものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、高純度(99.99%)のニッケル素材の入手のしやすさや加工の容易さの観点から、直径 5 mmφのニッケル丸棒から加工を始め、最終的に幅 0.5 mm、厚さ 0.2 mmの四角線を得た。これは、IFW-Dresden(Leibniz 国立研)の特許出願(特表 2007-503314)で、冷間引き抜きによる丸線への加工も、最終的なテープ形状への圧延加工・再結晶熱処理で立方体集合組織を得るために有効に働く、との記載があったためである。しかし、800~1350℃の再結晶熱処理では、Ni (200) が主要面となる表面が得られたこともあったが、4面すべてが立方体集合組織になることはなかった。それで、より大きな加工度を得るために、さらにサイズの大きな所から加工を行ったところ、4面すべてで立方体集合組織が主となるニッケル平角線を得ることができた。 立方体集合組織を有するニッケル角線の製作に時間を要したため、その上のバッファ層成膜、超伝導層成膜は、翌年度に持ち越しとなった。しかし、単結晶基板や立方体集合組織を有する Ni シートを用いてバッファ層成膜のための基礎データを取得するとともに、YBCO 薄膜作製のためのディップコート装置を導入し、単結晶基板上に YBCO 薄膜を試作した。それらの知見を翌年度の研究に活かす予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究においては、以下の4つの課題を順次遂行して行くことになっている。 ① 純ニッケル棒の引き抜き加工と再結晶化熱処理による立方体集合組織を有する四角細線の製作、② YBCO 薄膜の成膜を可能とするためのバッファ層の成膜(大面積PLD法)、③ フッ素フリー MOD 法(有機金属塩蒸着法)による YBCO 薄膜の作製と超伝導特性の評価、④ 集合撚り線の製作と超伝導特性の評価 平成25年度は、課題①に想定以上の時間を要したので、課題②に取りかかる時点までしか進展しなかった。今後、課題②について、電解研磨により金属表面を平滑化した後、CeO2(シード層)、YSZ(拡散防止層)、CeO2(格子整合層)の順に成膜する。その後、バッファ層付Ni四角細線に精密ディップコーティング装置を用いたフッ素フリー MOD法によって YBCO 薄膜を作製して結晶性と臨界電流を評価する(課題③)。この方法は、Y, Ba, Cu を含んだ溶液を基板に塗布した後、乾燥・仮焼・本焼のプロセスによって YBCO 相を生成させるもので、その後の焼成過程で線材を回転させることなく四面とも均一な成膜が可能であるため、四角線上への YBCO 膜の作製に適した方法である。研究が順調に進展すれば、課題④にも取り組む。
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