2013 Fiscal Year Research-status Report
無線通信システム特性改善のためのトランスミットアレーを用いた電波環境操作法
Project/Area Number |
25630157
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
本間 尚樹 岩手大学, 工学部, 准教授 (70500718)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | MIMO / チャネル容量 / トランスミットアレー / 電波伝搬 |
Research Abstract |
本研究では,MIMO (Mutiple Input Multiple Output)システムにおいて,キーホール効果によって低下するチャネル容量を,電波伝搬環境を操作することによって改善することを目的としている.平成25年度の検討では,測定系の構築とそれを用いた基礎実験を行った.測定系の構築では,まず基板上にプリントによりダイポール素子を構成したトランスミットアレーを試作した.次に,パラレルインターフェースから出力される電圧値をダイオード制御に適した電圧に変換する増幅装置を製作しインターフェースと組み合わせることによって,トランスミットアレーの制御系を実現した.次に,既に構築している4x4MIMOのチャネルサウンダとこれらを組み合わせて伝搬試験を行った. 伝搬試験では,ダイポール素子で構成された可変トランスミットアレーを部屋と部屋の間に設けた開口に設置し,トランスミットアレーによるチャネル容量改善効果を実験的に評価した.トランスミットアレーを構成するダイポール素子の装荷インピーダンスとして,varactor diodeを使用し,電圧制御を行うことによって可変機構を実現する.ダイポール素子を独立に制御し,最適な値の組み合わせを実現することによって,チャネル容量の最大化を図った.シールドルーム内で実験を行い,実際にアンテナを配置しトランスミットアレーを介して電波伝搬特性が改善されるか評価を行った.MIMOチャネルの測定結果より,チャネル容量の10%値が2.52 Bits/s/Hz改善することが分かり,見通し外(NLOS: Non Line-of-Sight)環境の伝搬特性改善にトランスミットアレーが有効であることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の主な実施計画は実験系の構築である.本年度は,誘電体(PTFE)基板上に無給電のダイポールアンテナを多数構成したトランスミットアレーを試作した.無給電ダイポールは中央に可変リアクタンス素子としてバラクタダイオードを取り付けた.各ダイオードにはバイアス線が接続されており,DC信号(DC電圧)によってリアクタンス値(終端条件)が制御される.トランスミットアレーを構成する全てのダイポール素子を個別に制御することを可能とした. 次に,測定系を構築した.ネットワークアナライザと分岐SW(スイッチ)を用いた4x4 MIMOチャネルの測定系を活用した.基地局を想定した送信アンテナと,端末用の受信アンテナを試作した.トランスミットアレーは送受信装置の中間位置に配置できるよう,固定治具を作成した.また,パラレルインターフェースを用い電圧のON/OFF信号を多数出力させ,これをトランジスタによりバラクタの動作可能電圧(約20V)に増幅する回路を試作した.ネットワークアナライザ,分岐SW,パラレルインターフェース,ポジショナは制御PCによりコントロールされ,トランスミットアレーの終端条件やアンテナ位置を変えながらMIMOチャネルを自動測定する系を構築した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の検討は概ね順調に推移しており,今後の検討は当初の計画通り以下のように実施するものとする. (1)トランスミットアレーによる改善効果の明確化(トップデータの取得):多素子の大規模な可変トランスミットアレーを試作し,改善効果の最大値を求める.この場合,送受信アンテナ位置に対して最適な終端条件を探索し,面的な特性評価を行う.これによって,通信可能エリアの改善効果が明確になる.さらにトップデータを取得し,トランスミットアレーによってエリア端の伝送容量が実際に2~3倍に改善されることを明らかにする. (2)制御法の簡易化:各端末の位置に対してトランスミットアレーを最適化することは実用上困難であることが予想される.例えばトランスミットアレー素子が100素子の場合はON/OFFの組み合わせが2の100乗≒10の30乗通りとなるため最適化に多大な時間を要する.そこで,トランスミットアレーと送受信アンテナ間の伝搬チャネルを推定する等の手段によって,決定論的に最適制御値を求める方法について検討する.これによって,ランダム探索が不要となるため,簡易かつ高速な最適化が可能になる. (3)固定的制御値の最適化:可変にしない簡易機構のトランスミットアレーの設定値を明らかにする. (4)環境や配置場所の検討:本測定系を様々な場所に配置し効果の評価を行う.基地局を実際に屋上に配置し,屋内に受信機を配置することによって,セルラシステムに近い伝搬特性で評価が可能になる. 以上の方策によって,本検討を効率的に推進する.
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