2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25630165
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長谷川 英之 東北大学, 医工学研究科, 准教授 (00344698)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 超音波 / 拡散波 / ビームフォーミング |
Research Abstract |
平成25年度は,超音波送信に使用する球面拡散ビームの生成方法の検討および最適化を行うとともに,送信ビーム内に多数の角度の異なる受信集束ビームを形成する手法について検討を行った.アレイ状超音波プローブの各素子の駆動時刻を制御することで,超音波プローブ内部に想定した仮想点音源からの球面波(球面拡散波)を実現できることを確認した.各素子の駆動時刻は,超音波アレイ振動子と仮想点音源との距離により決定する.多数の素子を用いて球面拡散波を送信することにより,1素子もしくは少数の素子を駆動することにより球面波を発生させる従来の手法に比べ送信超音波音圧を飛躍的に高めることに成功した.また,送信波面を,超音波プローブ内の仮想点音源を中心とする円と考えることにより,イメージング対象点からの超音波エコーの受信時刻を推定し,受信集束ビームを形成する手法を用いることで超音波断層像を構築する手法を開発した.超音波画像評価用ファントムを用いた基礎実験を行い,超音波断層像を適切に構築できることを確認した.本評価実験において,構築した超音波断層像において空間分解能やコントラストが従来の集束送信超音波ビームを用いたイメージング法に比べ劣化していることが認められた.空間分解能とコントラストを改善するため,超音波アレイ振動子の各素子で受信した信号の位相情報に着目した.受信ビームフォーミングにおいて,想定した散乱点までの往復伝播時間を相殺すると,想定した散乱点と実際の散乱点が一致している場合は各素子で受信した信号の位相が揃っていると考えられる一方,一致していない場合は位相が揃っていないと考えられる.このような違いを,位相の分散として評価することにより受信ビームフォーミングにおいて設定した焦点位置以外からの散乱波を抑圧し,高時間分解能を実現しながら空間分解能とコントラストを従来法と同程度まで改善することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画において,本年度は球面状に拡散する送信超音波ビームの実現と,球面拡散送信ビームに対応した受信ビームフォーミング法および超音波断層像構築を目標としており,それらいずれも達成できたことから,当初計画通りに研究が進捗していると言える.送信に使用する球面拡散波については,アレイ型超音波プローブの多数の素子(最大96素子)を用いて実現することに成功した.従来の集束送信ビームに比べ送信波音圧は減少するが,1素子(もしくは少数の素子)ではなく多数の素子を用いることにより送信波を拡散させても十分な音圧レベルの超音波を画像化の対象領域に照射できることを確認した.受信ビームフォーミングについては,従来の集束送信ビーム波面と球面拡散ビーム波面が画像化対象領域内の各点まで伝播する時間の違いを考慮してビームフォーミングを行うことにより超音波断層像が構築できることを確認した.超音波画像評価用ファントムを用いて評価を行ったところ,送信にも集束波を用いる従来のビームフォーミング法に比べ空間分解能とコントラストが劣化していることが判明した.しかし,これらの問題についても,アレイ型超音波プローブの各素子で受信した信号を解析することにより空間分解能およびコントラストを改善する手法を開発することに成功しており,これらの達成状況から,当初目標を達成できたと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に開発した受信ビームフォーミング法および断層像構築手法では,球面拡散波により超音波が照射された範囲に関して,異なる角度で多数の受信集束ビームを形成することにより超音波断層像を構築している.今後は,これら多数の受信集束ビームに沿った方向の対象物変位を推定して合成することにより対象物の変位ベクトルを推定する手法の開発を行う.変位を推定する関心点を通過する複数の受信ビームから得られた受信信号を用いて,関心点についてそれぞれの受信ビームの方向の変位を求める.このように,関心点の変位を多数の異なるビーム方向に分解して計測し,それらを合成することで変位ベクトルを推定する.それぞれの受信ビーム方向の変位を求める手法としては,受信超音波信号の位相変化を用いる手法,受信超音波信号間の相関や残差を用いる方法などを検討する. 本研究では,変位ベクトルを計測する動的な生体組織・器官として動脈壁を想定する.開発した変位ベクトル計測法の精度評価を行うために,模擬血管(シリコーンゴムもしくはウレタンゴムで製作)を用いた基礎実験を行う.既設の拍動流ポンプを用いて模擬血管内に流体を循環させ,内圧変化(心拍に伴う血圧変化に対応)を発生させる.本模擬循環系において模擬血管の輪切り(短軸)断面からの超音波受信信号を計測するとともに,圧力センサを用いて内圧も計測する.短軸の超音波断層像については,従来法に比べ角度依存性が低減しているかどうか評価を行う.また,変位ベクトルの計測精度評価に関しては,模擬血管の寸法・弾性率および圧力センサにより計測した内圧を元に理論的に推定される変位量を真値として,超音波により計測した変位ベクトルの誤差を評価する.以上の評価実験を行った上で,ヒト頸動脈短軸断層像の非侵襲的in vivo計測を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年度において開発を行う変位計測法の評価を行うための評価実験系の部品および評価実験で得られる超音波信号解析用のソフトウエアが必要となったため,平成25年度において送信用球面拡散超音波ビームにより発生する音場分布を計測するためのハイドロホン走査システムを構築する際,必要な仕様を絞り込むことでシステム構築に必要な回路部品の調達において余剰金を確保した. 平成26年度において開発を行う変位計測法について,ウレタンゴムを用いて模擬血管を製作し評価実験を行う予定である.ウレタンゴムの内圧を変化させ,拍動を発生させるための模擬循環系を構築する予定であるため,そのために必要となる模擬循環系の部品費および評価実験で計測した超音波信号の解析用ソフトウエア購入費として使用する.
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