脊髄損傷リスク回避のための超音波反射法による脊椎内イメージングシステムの開発

2013 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 25630166
• Research Category: Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
• Research Institution: Tohoku University
• Principal Investigator: 森谷 祐一 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60261591)
• Project Period (FY): 2013-04-01 – 2016-03-31
• Keywords: 超音波 / 反射波 / 脊椎

Research Abstract

本研究は，脊椎内構造を超音波反射法により計測する技術の開発を目指し，骨試料を用いた反射波計測実験，反射波抽出ならびに骨内構造推定のための信号処理法の検討，ナビゲーションを可能とするための可視化法の検討を行う．本年度の研究計画は，超音波送受信素子プロトタイプの設計と製作，脊椎を用いた計測実験とデータの取得である．そこで本年度はまず，計測実験装置の整備と超音波送受信素子の設計を行った．計測装置製作では，ソフトウエアを利用し，測定波形やセンサのポジションなどのパラメーターを自動取得可能で，繰り返しデータの取得ができきる装置の設計を行った．一方，汎用の超音波センサー（10MHｚ）では，骨内反射波を検出できることが予備実験により明らかになっているが，検出される反射波の振幅が小さい事と，骨とセンサの接触状態により信号強度が大きく変化するため，センサと骨との音響カップリングは重要な問題である．そこで，超音波送受信素子の設計に関しては，センサ本体と骨の間のカップリングが超音波の骨中への透過量に大きく関係するため，センサと骨の接触面との間のカップリング材料の検討を行った．本研究では，骨に近い音響インピーダンスを有するポリイミドに着目して検討を行った．その結果，ポリイミドは，カップリング材料として用いることは可能であるが，センサ本体とポリイミドの接合部での反射波が予想以上に大きくなる場合が生じることがわかり，接合方法の工夫や場合によってはカップリング材料に音響インピーダンスの傾斜をつけるなどの検討が必要であることが分かった．

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

本年度の研究計画では，高分子膜振動子を有する超音波送受信素子（プロトタイプ）の設計と製作を掲げていた．カップリング材料の検討などを行ったが，最適なセンサー構造を設計するまでには至らなかった．製作までに検討を有する事項は，カップリング材料とセンサ本体の接合に関するもので，最適な送受信素子を製作するために，接合方法等についてさらに検討を行う必要が生じた．

Strategy for Future Research Activity

今後の進め方は以下の通り．（1)音波送受信素子（プロトタイプ）の設計と製作：骨との音響カップリングを考慮し，直径5 mm程度の孔に挿入可能な素子を設計を引き続き行い，制作する．そして，実際の骨を用いた反射波測定実験と反射波データの取得ができるようにする．(2)　脊椎を用いた計測実験とデータ取得：食肉業者から入手し反射波計測実験を行う．本実験では，エアードリルにより切削・穿孔した試料を作製し，反射波計測実験を行う．手術中の穿孔時には，孔内が水で満たされることから，反射波計測は湿潤状態で行う．ここでは，ゲルを満たした穿孔内に超音波送受信素子挿入し，パルス波を送信した際の孔内・骨内からの反射波，散乱波を計測する．この際，送受信面と穿孔内の骨が接触する状態と接触しない状態，孔底面に対して角度を与えた場合等の様々な状況下でデータを取得し，素子と骨とのカップリング，孔底と素子間の多重反射の状況，脊椎内部からの反射波，散乱波の状況等を詳細に検討する．
(3)反射波抽出のための信号処理法の検討：入力パルスと反射波間の時間差が小さいことから，受信波から入力パルス除去フィルタを開発する．ここでは，多重反射波の除去が主要課題となる．これまでの予備実験では，エネルギーの大きな多重反射波が波形上に複数出現するものの，多重反射波は波形上に等時間間隔で出現しており，同定は比較的容易であることが明らかになっている．よって，多重反射波の性質を利用した除去法を開発する．多重反射波除去法，骨底からの反射波と孔底からの反射波検出法，骨底からと孔底からの反射波を分離，抽出する方法の検討を行う．

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

当初，超音波送受信素子の設計と製作を計画し研究を進めてきたが，製作に移す前にカップリング方法についてさらに検討をしたほうがよいとの判断により，超音波送受信素子の製作まで行わなかったため．
カップリング材の検討を進めるともに，製作の段階に移行する．