2013 Fiscal Year Research-status Report
ディスクリートアナログ電子回路部品だけを用いた量子計算機実現の試み
Project/Area Number |
25630169
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
深津 晋 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (60199164)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アナログエレクトロニクス / ディスクリート部品 / 周波数重ね合わせ状態 / 量子計算 / 量子通信 / 量子アルゴリズム / カスケード接続 / プラグ&プレイ |
Research Abstract |
本研究では、周波数分割多重方式の古典通信用ハードウエアを活用した量子通信への拡張を目標に、アナログエレクトロニクスのディスクリート部品と正弦波電圧信号を利用したシミュレータを構築、新しい量子計算ハードウエア実装(「安価に」「平易に」「即納の」)の検証を目指している。平成25年度では、基本量子ゲートの回路デザインとプロトタイプの構築をターゲットに据え、周波数基底による基本量子ゲート動作の個別検証を試みた。1) 位相シフタ、2) 加算器、乗算器、3)周波数非依存周波数シフタ、4) コムフィルタを中心に、コアコンポーネントの設計・制作を試みた。1)については、正弦波電圧信号の振幅一定で位相シフトを確保する関係上、広帯域動作が困難であるため狭帯域バンド除去フィルターとオールパスフィルターの併用を検討した。2) については、原理の検証に特化し、サブ MHz の帯域制限の条件下で実装アンプを利用することを検討する一方で、高周波域への拡張性の観点からマイクロ波トランジタの登用可能性も検討した。3)については、信号の可干渉性を確保すべく局発+混合器の組み合わせとともに位相シフタと乗算器を用いた回路実装の可能性を検討した。4) については、中心周波数の異なるノッチフィルターをカスケードもしくは並列接続することで、2ポートでインライン構成のデザインを基本として、回路実装ではフットプリントの観点から計装アンプを積極的に使用することを検討した。さらに複素電圧信号のベクトル特性を利用して、周波数重ね合わせ状態の生成を試みた。信号源には周波数安定化正弦波発振器を用い、周波数シフタを用いてサイドバンドを発生した信号の和をとることで、周波数重ね合わせ状態を生成できることをスペクトルアナライザ上で検証した。これらを背景に周波数基底の基本量子ゲートの設計に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
周波数分割多重方式の古典通信用ハードウエアを活用した新しい量子計算ハードウエアの提案およびアナログディスクリート部品と正弦波電圧信号を利用したシミュレータ構築の観点からは、概ね計画どおりに研究が進んでいると言える。一方で、量子ゲートの実装に関しては、1ビット分の部品点数が予想を上回る状況に鑑みて、2ビット目への道筋が明確ではあっても平坦な道のりではなく、現時点において2ビット目が未着手であることに加えて、今後の進展ペースに若干なりとも影響することが考えられるため対策を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
ほぼ当初の予定どおりに回路実装から量子アルゴリズム実装の段階へと研究を推進できる状況にある。一部、当初計画では予想がつかなかった実装のための規格外部品の発生ならびに回路定数の精度の確保に一層の工夫が必要になった関係で、実装の段階で再検討を要する可能性をあらかじめ考慮する。その一方で量子ゲートの実装に関する技術的課題の発生が、今後の研究進展ペースに若干なりとも影響することが考えられる。そのため具体的な実装形態については当初計画を含めた方法論的な再検討の余地を残しており、量子アルゴリズムを部分的に仮想実装することも視野にいれて研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第一に、回路製作に必要となる部品点数増の関係から、当初計画の中で予定していた回路プロッタの仕様が、将来的に製作すべき回路基板のスペックに満たない状況であることが研究を進める途上で判明したため、次年度の回路製作にあわせた高スペック製品の検討あるいは別の調達形態を検討することとしたため。第二に、周波数基底を扱う必要性から、当初計画で予定したものよりもさらに高バンド幅で高機能のオシロスコープを選択すべき状況であることが判明したため。 平成26年度の交付分と合算の上で、ディスクリート電子部品の購入を計画どおり行う一方で、1GHzバンド幅の高機能オシロスコープあるいは複合型ミックスドシグナルアナライザの購入を検討し、当初計画よりも高スペックの回路プロッタの購入あるいは有限期間の借用に充てる可能性を検討する。
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