2013 Fiscal Year Research-status Report
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25630176
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田村 進一 大阪大学, その他部局等, 名誉教授 (30029540)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スパイク波 / 神経回路網 / 脳内情報通信機構 / シミュレーション |
Research Abstract |
我々はtime-shift図法を開発し,頭表脳波・皮質脳波,MEGからの脳波伝播解析を世界に先駆けて行った.そこでは,様々な情報が同時並行的に脳内各部に順次伝達される状態が可視化された.そこで我々は,脳構成論の立場から,記憶の基本はループ回路であり,このような経路の探索・形成がHebb則に従う神経回路で可能であり,記憶銘記,連想,抽象化,記憶の再構成など脳情報処理の基本機能が,単純な経路形成のみで統一的に説明され,生理的・神経回路的に実現可能であると仮説を立てて,この実証を試みている.その一環として,本申請研究では,上述の脳情報処理の基本機能,特に脳内情報通信機構の解明を,シミュレーションにより取り組んでいる.その結果,本年度は,神経発火で構成される時空間パターンが神経回路網中をスパイク波として伝搬し,さらに送信神経群での時空間パターンが受信神経群で復号可能であることが解かった.すなわち脳情報通信の基本機能が神経回路網内で発生するスパイク波に由来することが解明できた.この解析をさらに進めることにより,記憶銘記,連想,抽象化,記憶の再構成などの機能を解明する手掛かりが得られるものと期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究実績の概要】でも記した通り,我々は脳内通信機構の解明を神経回路ベースで進めており,脳情報処理の基本機能が,単純な経路形成のみで統一的に説明され,生理的・神経回路的に実現可能であることを示す研究を進めている.これらのシミュレーション的実証については,平成21-23年度挑戦的萌芽研究「脳の自己組織化:記憶・連想・抽象化のループ回路的実現」において,ループ回路へのバックプロパゲーション学習の適用などを行った結果,time-shift図を説明できるような通信機能の自己組織化が物理的に実現可能であることが分かった.一方,平成21-26年度基盤研究A「脳記憶ループと遠隔転写の生理学的実証」において,複数の神経細胞(神経細胞グループ)により生成されるスパイク列の符号が別の神経細胞グループに伝播されていることを,培養神経細胞のスパイク列より確認することができた.しかし,これらの従来研究においては通信機構の発生原因,即ち脳内情報処理の基本原理については不明であった.本研究においては,その発生原因を追究すべく取り組んできたが,本年度下半期にブレークスル―があり,それらが神経回路網内で発生するスパイク波に由来することが解明できた.このスパイク波モデルは,従来にはない全く新しいモデルである.
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Strategy for Future Research Activity |
【研究実績の概要】でも記した通り,我々は脳内通信機構の解明を神経回路ベースで進めている.その一環として,本申請研究ではこの脳内通信機構をシミュレーションにより解明すべく,取り組んでいる.その結果,本年度は,神経発火で構成される時空間パターンが神経回路網中をスパイク波として伝搬し,さらに送信神経群での時空間パターンが受信神経群で復号可能であることが解かった.今後はこのスパイク波モデルに基づき,学習アルゴリズム,学習に伴うスパイク波の伝達経路をシミュレーションにより解析し,このモデルの確立を目指す.その上で,これまで未解明であった記憶銘記,連想,抽象化,記憶の再構成など,脳内情報処理基本機能の解明を,脳内情報通信の視点から試みる.さらにこれらの生理学的実験のプロトコル確立に向けたシミュレーションも行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
他大学共同研究グループより、学会発表の旅費支援が得られたため、当該研究費からの旅費の出費を抑えることができた。 本年度請求金額の次年度使用額については、次年度の論文投稿料などに出資予定である。 また次年度請求額については、より大規模な神経回路網のシミュレーションを高速で行うため、より高性能なコンピュータの購入などに出資予定である。
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