2013 Fiscal Year Research-status Report
皮膚低周波刺激での身体図式改変によるビークル操作熟達支援
Project/Area Number |
25630179
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
鈴木 聡 東京電機大学, 未来科学部, 准教授 (20328537)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 身体図式 / 支援制御 / 経皮低周波刺激 / 熟達 / 視覚体性感覚 / ドライビングシミュレータ / 丁度可知差異 |
Research Abstract |
ビークル運転操作の熟達に重要な車両感覚と関係深い身体図式(body schema:身体の延長感覚)に着目し,経皮低周波刺激で操作者の身体図式に干渉してビークル運転操作支援を行うために必要な要素について研究を実施した.今年度は,低周波刺激発生機器と生体計測装置を連成したビークル運転シミュレータを構築し,(A).低周波刺激を用いた車両感覚簡易支援法による操作者運転性能への効果を見るためのパイロット実験(被験者19名)と,(B).脳機能計測による身体図式改変程度の客観的計測法の模索,の2つの項目に取り組んだ. 項目Aについては,鳥口上腕靭帯付近への経皮微弱電気刺激により,操作者にその刺激を認知させずにビークル操作性能を向上できることが確認されたが,同時に同微弱電気刺激に対する知覚弁別度の個人差が大きいことも確認された. 項目Bに関しては,最初に,経皮低周波刺激の候補の一つである低周波音振動刺激に関して,身体図式の改変効力を運動錯覚実験(ピノキオ錯覚と屈曲錯覚)を用い,既存研究の諸条件で追試した.しかし,その運動錯覚の誘発率は3~4割程度に留まり,十分な発現を見出せなかったため,低周波音振動刺激による方式を棄却し,経費微弱電気刺激による方式を採用することとした.次に,身体図式改変の要因の一つである視覚情報に着目し,ビデオカメラ/モニタで視覚情報提示を光学的に変えて被験者に与える,"視覚体性感覚不一致タスク"を用い,身体図式の改変の学習中の脳活動を近赤外光脳血流計測(NIRS)で調べた.身体図式に関係すると言われている幾つかの脳部位の賦活変化を分析したところ,下頭頂葉小葉の賦活変化が視覚体性感覚不一致の程度に応じて有意に変化する(p<0.01)ことを確認した.以上により,身体図式の拡張の獲得程度を定量的に計測する手段の目途も立てることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究項目A(ビークル運転シミュレータの統合開発とパイロット実験の実施)については,運転中に主観的知覚を与えない強度の経皮低周波刺激で,身体図式拡張に関わる運転支援が可能である見通しは得られ,その目標は達成された.研究項目Bについても,身体図式の拡張学習に伴う生体的反応現象を,脳機機能計測により客観的に判定する一手法を見出せた.従って本年度は概ね計画通りに進めることができた. しかし,項目Aに関しては,支援効果や経皮微弱刺激に対する知覚強度に個人差があったので,次年度実施予定である丁度可知差異(JND)解析実験を行う前に,前述のパイロット実験で得られたデータについても個人差を精査する必要性を再認識した.また,同パイロット実験で確認された運転支援効果が,身体図式の拡張のみに因るものなのかについては,現時点で十分に断言できている訳ではない.これらの事項については,次年度でNIRS計測を用いて解析する計画であるので,当初の計画案に沿って研究を進める.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従い,次年度では,(1)経皮微弱電気刺激の最適条件の探索調査,(2)視覚的変化と低周波刺激変化とを相互/独立に変化させた時のJND同定のための被験者実験,(3)車両感覚向上支援の制御系設計法の確立,を進める. 既にJND調査用のシミュレータ運転コースと実験プロトコルは,ハプティックアクセルペダルによる踏力計測を準備的解析対象とした操作者の弁別度解析実験(既に被験者数20名に対して実施し,弁別度特性の算出が可能である見通しを得ている)で大凡の部分が完成しているので,これを用いて項目(1)の探索調査と,項目(2)のJND計測実験を行う.その計測実験の際には操作者のNIRS計測も行い,車両感覚を必要とする運転操作の熟達度が,経皮微弱電流刺激による身体図式の改変促進によって向上し,さらにその習得変化が脳血流量の違いとして定量的に判定できるかを実験的に確認する.そして,車両感覚向上支援の制御系設計に反映させ,再度ビークル運転シミュレータに実装し,項目(3)に取り組む.そしてこれら被験者実験で蓄積したデータの分析・評価を行って,本研究を総括する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
補助金使用残金の端数分 少額の為,次年度と合算して使用
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