2013 Fiscal Year Research-status Report
化学的・生物学的プロセスによって形成される石灰岩ステップ地形
Project/Area Number |
25630205
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
泉 典洋 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10260530)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横川 美和 大阪工業大学, 情報科学部, 教授 (30240188)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 石灰岩 / ステップ / トラバーティン / カルスト / プリトビッツェ / 二酸化炭素 / バクテリア / コケ |
Research Abstract |
石灰岩で覆われたカルスト地帯では,通常の地形とは異なる特徴的な地形が見られる.本研究では,特に石灰岩で覆われた河床上で見られるステップ地形を対象とする.石灰岩地形におけるステップ地形は,主として次の二つに大別することができる.一つは,鍾乳洞の内部や石灰質を含んだ温泉が地中から地上に湧出してきた場所に見られる数十センチから数メートルスケールの石灰華段である.もう一つは,クロアチアのプリトビッツェや中国の九寨溝に代表される数百メートルから数キロメートルのスケールを持つ石灰岩ダム地形であり,通常流下方向に複数個形成される大規模石灰岩ダムによって湖群が形成されるのが特徴となっている.前者の小規模ステップ地形が,脱二酸化炭素過程による石灰質の析出という純粋な化学的なプロセスによって形成されるのに対して,後者の大規模ダム群はコケやバクテリアの作用による生物的な作用が重要な役割を演じていることがわかってきている. 平成25年度は,生物的な作用による大規模ダムの形成機構を説明するための数学モデルを構築した.モデルではコケの繁茂とそれに伴うバクテリアの繁殖の制限因子として光合成に必要な光を仮定し,成長速度を水中における光透過率の関数として表した.このモデルを用いて形状を変化させないで一定速度で成長する石灰岩ダムの形状を解析的に導き,そのようなダム形状が現れ得る条件を明らかにした. さらに小規模な石灰岩ステップ地形の形成を再現する水路実験を行った.実験では,二酸化炭素で飽和させ大量の石灰岩を溶解させた水を長時間水路に流すことで,河床に石灰質を沈着させた.石灰の沈着を促すため,水路に流入する直前で水を加熱し,脱二酸化炭素過程を促している.実験の結果,流れ方向に水深の数百倍程度の比較的規則正しい間隔で初期ステップ地形が形成されることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では平成25年度は,生物過程が支配的な大規模石灰岩ダム地形のモデルの構築と,化学過程が支配的な小規模石灰岩ステップ地形のモデルの構築および水路実験を行うことになっていた.このうち,大規模石灰岩ダム地形についてはモデル構築のみならず,それを用いた理論解析によってダムの形状まで導いている.一方,小規模石灰岩ステップ地形についてはモデルの構築は未だ途上にあるものの,水路実験については予定通り行われている.これらのことから,当初予定はおおむね順調に進展していると評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度にクロアチアのプリトビッツェ湖群国立公園で現地調査を行うことによって,大規模石灰岩ダム群の形成理論の検証や修正,改良を行う.また平成25年度の研究成果から,国内でも類似の大規模石灰岩ダム地形が形成されていることがわかっている.そこで国内の現地調査も行うことで,大規模石灰岩ダム群の形成モデルの検証および修正,改良を行う. 小規模石灰岩ステップ地形については,モデルの構築を完成させると同時にステップ地形を予測するための理論解析を行う.また,水路実験をさらに進めることで,理論の検証および修正,改良を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度,実験を行う上で温度を制御するための低温循環水槽を購入する必要が生じたが,残額が不足していたため,次年度の予算と合わせて購入できるよう51万円を繰り越した. 繰り越した51万円と,次年度に配分される額の一部を合わせて,低温循環水槽を購入する予定である.
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Research Products
(3 results)