2013 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災における都区内道路グリッドロック下での動的経路選択の行動原理の解明
Project/Area Number |
25630219
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
岩倉 成志 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (20223373)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
毛利 雄一 一般財団法人計量計画研究所, その他部局等, 研究員 (60246692)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 都区内道路 / グリッドロック / 道路渋滞 / データ融合 / ビッグデータ |
Research Abstract |
東日本大震災時の都区部では,広範囲かつ長時間に渡って,グリッドロック現象を伴った交通渋滞が発生し,都区部における道路ネットワークの脆弱性が浮き彫りとなった.このとき観測された渋滞現象は,今後発生が確実視される大規模地震時において深刻な問題になると指摘されている.震災当日の道路状況を広範囲かつ長時間にわたって複数のデータが観測されたのは初であり,このとき観測されたデータから多くの研究が行われている.筆者らは,複数のデータがそれぞれの情報を補いあうことで,より精度が高く,密度高く都区部の震災時の渋滞状況を明らかにできると考える. 本研究では,デジタル道路地図(以下DRM)のリンク内所要時間が取得可能なタクシープローブデータと,日本道路交通情報センターの渋滞統計データをDRM ベースに統合する手法を開発し,フォーマットの一元化を行うことで震災当時の道路状況をより正確に把握するための渋滞状況データの構築をおこなった. 本研究で融合する二種類のデータの内,プローブデータについては,すでにDRM と整合しているため,主に渋滞統計データをDRM に統合する方法を記す.DRMに統合する際に問題となったのが,渋滞長の先頭ノードの特定と,渋滞長の延伸方向の特定である.その問題に対応するため,座標系の統一,渋滞統計データの渋滞長の先頭座標をDRMのノード座標にマッチングさせる方法を開発し,DRM リンクベースに統合した. 渋滞統計データの2 段階の速度区分と,プローブデータの速度データで両者の速度が異なるリンクの存在を検証した結果,0~10km/h では,全データ中の整合性は65%となった. 以上より一種類の観測データだけを用いて当時の状況を分析することの危うさが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は計画は以下のとおりである.平成25年度は,複数のプローブデータによるリンク速度データと常観データを統合し,5分ピッチの広域なリンク速度データの構築方法の検討と,2011年3月11日(震災時)と3月4 日(通常時)の都区内のリンク速度データの作成を実施する.平成26年度は,上記作成のリンク速度データと,プローブ情報によるドライバーの経路選択行動をもとに,グリッドロック現象下のドライバーの動的な経路選択行動の原理の解明を行い,離散選択モデルをベースとした動的な経路選択モデルの構築を行う. 震災時の2種のデータ融合は100%完了しており,3月4日に関しては70%完了している.今後,NAVITIMEのプローブデータや入手可能な他のプローブデータの融合を行うため,マップマッチングの作業を進行中である.また,NAVITIMEデータを用いて,震災当日の代表的なOD間の経路選択データをDRM上に描き,当時の経路をトレースした. 以上より概ね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
A.複数データを統合した精度情報つき逐次リンク速度の整備:今後は,NAVITIMEのプローブデータや入手可能な他のプローブデータの融合を行い,さらなるデータ精度と密度の向上を図る. B.グリッドロック現象下での経路選択行動モデルの開発:1)プローブカーデータによる経路選択情報の収集:プローブカーデータの単位時間毎の位置座標情報をもとに,震災当日および前週3月4日の時々刻々の移動経路を分析し,A で作成した5 分ピッチの当該リンクの速度データを付与する.2)震災時の動的経路選択の行動仮説の検討:まず,震災時の選択経路の状況と通常時(3月4日)の選択経路とを比較し,相違の程度を分析する.次に経路の選択要因(例えば,選択決定地点までの渋滞通過時間や速度,選択決定地点から先の渋滞状況,主要幹線道路上か否かなど)の抽出を行う.要因の抽出に際しては,限定合理的なドライバーの経路選択方略や経路の想起集合の道路状況に伴う動的な変化を念頭においた検討を行う.3)動的経路選択モデルの開発:上記で検討した選択要因をサービス水準データとして整備する.通過交差点ごとの右左折選択モデルを構造化プロビットモデルやPath-size Logit などの離散選択モデルベースで個人ごとに構築することを試みる.ただし,共同研究者との打合せでは,NAVITIMEプローブの震災当日の経路を把握した仮定で,平常時(3月4日)の経路選択をマクロにモデル化し,震災時の経路選択行動との不整合を判定する研究がより価値をもたらす可能性があることが議論されており,経路データの全般的な把握をした上で,より研究価値の高いアプローチに変更することも検討している.4)精度検証:プローブカーデータの実績経路に対する動的経路選択モデルの経路追従性を検証する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
プローブデータの購入する種類と購入可能性の検討を行っているため,当初,NAVITIMEのプローブデータと他の種類のプローブデータの購入を検討していたが,購入価格や提供先制限等から,購入の方法や,NAVITIMEのデータクリーニングの発注への切り替え等を検討しているため,今年度への繰り越しとした. 本研究に適したプローブデータの購入,昨年度購入プローブデータ(NAVITIME)のデータクリーニング発注など本研究目的の達成に最も活かせる使用方法を計画検討中である.
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