2013 Fiscal Year Research-status Report
先進国社会における胃腸炎ウイルス適応進化による消毒剤耐性獲得メカニズムの解明
Project/Area Number |
25630220
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐野 大輔 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80550368)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 幸三 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (80634435)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ノロウイルス / 上水 / 下水 / 塩素消毒 / 繰り返し曝露 / 消毒剤耐性 / カプシドタンパク質 / アミノ酸変異 |
Research Abstract |
比較的衛生状態が良いとされる先進国社会においてもノロウイルスによる感染症が数多く発生している。このことは、ノロウイルスが個人の衛生レベルでの対処や地域社会における従来の上下水道設備によっては制御しがたい性質を有していることに起因すると考えられる。本研究では、ノロウイルスの塩素消毒耐性獲得メカニズムを解明することを最終目的としている。平成25年度においては、繰り返し塩素に曝露することでノロウイルス集団が塩素耐性を獲得することが可能か否かを確認するための研究を行うことを目的とした。遊離塩素への繰り返し曝露によるマウスノロウイルスの遊離塩素感受性が遷移する過程を評価したところ、遊離塩素への繰り返し曝露を行ったテスト系でLog reductionが低下する現象が見られた。このLog reductionの値は、サイクルを13回繰り返すことによってさらに低下したが、これは塩素処理を繰り返し受けることにより、比較的高い塩素耐性を有するマウスノロウイルス株が優占してきたものと考えられた。10回目のサイクル後のサンプルについて、カプシドタンパク質遺伝子配列を解析したところ、11カ所に変異が入っていることが確認された。特にN/S領域において比較的多い非同義変異(5カ所)が見られたことから、この2カ所のアミノ酸変異がカプシドタンパク質の安定性及び塩素耐性に影響を与えたことが示唆された。以上のことから、遊離塩素への繰り返し曝露により、比較的塩素耐性の高いマウスノロウイルス集団を取得することに成功したと言える。塩素耐性の高いマウスノロウイルス集団には、カプシドタンパク質遺伝子に3つの変異が入っており、これらのうち非同義変異をもたらした2つの変異が、カプシドタンパク質の安定性及び塩素耐性に影響を与えたことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究ではマウスノロウイルスの塩素耐性株を取得することが第一目標であったが、そもそもそのような株が存在しないことも想定された。結果的に、野生株に比べて明らかに塩素耐性が高い変異株を取得することに成功した他、その塩素耐性がカプシドタンパク質におけるアミノ酸変異に起因することを示唆する実験結果を得るなど、塩素耐性メカニズムの解明という研究課題の達成に最初の1年で大きく近づいたことから、本研究は当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目で得られた変異株の他にも、アミノ酸変異数が異なる株の存在が示唆されていることから、これら複数の変異株をそれぞれ単離し、塩素感受性の違いを評価する。その評価結果をもとに、どのアミノ酸変異が最も遊離塩素耐性に寄与していたかを明らかにする予定である。
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Research Products
(3 results)